21世紀文学研究所

1サラリーマンの読書日記です。

5月の読書メーターまとめ

5月の読書メーター読んだ本の数:12読んだページ数:4427ナイス数:49平家物語ハンドブック読了日:05月30日 著者:おはなしして子ちゃん (講談社文庫)の感想短篇集って面白いな、と思わせる本でした。文芸誌っぽい中篇は途中でアイデアに飽きてしまうことが…

4月の読書メーターまとめ

4月の読書メーター読んだ本の数:10読んだページ数:3135ナイス数:24警視庁捜査二課・郷間彩香 特命指揮官 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)読了日:04月29日 著者:梶永 正史爪と目 (新潮文庫)の感想意味の多いスティーヴン・キングという感じがしま…

四十男、同世代作家を読む(1)塩田武士

時の経つのは早いもので、このブログの最初の頃には二十代だった私も、今月、四十歳の誕生日を迎えます。しかし、ただ漫然と四十歳の一年間も過ごすのもなんなので、今年は意識して同世代作家の本を読んで行くことにしました。同じ世代の人とはおそらく、文…

3月の読書メーターまとめ

3月の読書メーター読んだ本の数:13読んだページ数:3999ナイス数:41読み出したら止まらない! 時代小説 マストリード100 (日経文芸文庫)読了日:03月28日 著者:末國 善己大坂堂島米会所物語の感想小説でわかる堂島米会所、といった作りの本なのですが、仕…

2月の読書メーターまとめ

2月の読書メーター読んだ本の数:10読んだページ数:3413ナイス数:17高校入試 (角川文庫)読了日:02月25日 著者:湊 かなえ新装版 鬼平犯科帳 (10) (文春文庫)読了日:02月24日 著者:池波 正太郎海外短編のテクニック (集英社新書)読了日:02月22日 著者:…

新刊書を電子書籍で読む

年始に今年の抱負として、「一箇月に一冊は新刊を読もう」と決めたのですが、そこは本屋に行くことがままならない海外在住なので、毎月一日、電子書籍サイトの「過去30日間の新刊」をまとめているページから選んで一冊買うことにしました。三箇月続いたので…

K.イシグロ『わたしを離さないで』感想その③語り手としてのキャス

「信用できない語り手」という、どちらかと言うとチープな評論用語がある。イシグロ作品についても使う向きがあるようだが、そもそも一人称の語り手を相手にして、記憶の正確さや語りの公平性を求めることには、無理があるように思う。だから、「信用できな…

1月の読書メーターまとめ

1月の読書メーター読んだ本の数:14読んだページ数:4851ナイス数:18女神のタクト (講談社文庫)の感想しゃべくり漫才のような会話のテンポに浸るうちに、実家のこたつでテレビドラマ見ているような感覚に包まれる、関西人には懐かしい感じの小説です。音楽…

K.イシグロ『わたしを離さないで』 感想その①

二年間も更新を放置しているうちに、イシグロがノーベル賞を受賞してしまった。それはとても良いことなのだが、前回の『わたしたちが孤児だったころ』の感想も途中で放棄している身としては、なかなか感想文も上げづらい。しかし、もういちど『わたしを離さ…

K.イシグロ『わたしを離さないで』感想その②忘れられた登場人物

最初に読み終えたとき、登場人物は何人、頭の中に残っているだろう? 正直を言えば、わたしの場合、さすがに、主人公級のトミー、ルース、キャスは大丈夫としても、あとはマダムと、ブルドックの顎を持つルーシー先生くらいだった。マダムよりも重要なはずの…

K.イシグロ『わたしたちが孤児だったころ』Part 3

警部、あなたほどの力量のある方はめったにいません。悪と戦う義務を課せられているわたしたちのような人間は、その・・・なんと言ったらいいですかね? ブラインドの羽根板を束ねている撚り糸のような存在なんですよ。わたしたちがしっかり束ねるのに失敗し…

雑感

「マンガいまさら気づいたシリーズ」『鋼の錬金術士』のホーエンハイムになる前の奴隷が二十三号と呼ばれているが、これって芥川の「河童」の語り手、患者第二十三号から来ているのですね。たぶんですが。

K.イシグロ『わたしたちが孤児だったころ』 Part2

もう遅い。最後の文章を書きとめてから、かなり時間が経ってしまった。それなのにわたしはまだこうして机の前に座っている。いつのまにかこれらの思い出に浸っていたのだろう。その思い出の中には、何年も頭に浮かんでこなかったものもある。(Part2 9) 昨日…

K.イシグロ『わたしたちが孤児だったころ』 Part 1

そうはいっても、このようなことはおそらくいずれ起こっただろう。実を言えば、ここ一年ほど急激に過去の思い出で頭がいっぱいになっていたからだ。そうなったのは、子供時代や両親の思い出が、最近ぼやけはじめたのに気がついたからだった。ほんの二、三年…

船戸与一『山猫の夏』

舞台はブラジル北東部の町、エクルウ。この町は100年のむかしから、アンドラーデ家とビーステルフェルト家に支配されてきた。町の権益をめぐり、血で血を洗う抗争をくり返す両家。だが、ある夏の日、アンドラーデの一人息子フェルナンと、ビーステルフェルト…

K.イシグロ『忘れられた巨人』第十五〜十七章

来るなら来い。来るがよい。お忘れか、アクセル殿。わしはあの日、貴殿と会っておる。貴殿は耳に残る子供や赤子の泣き声のことを語った。わしもそれを聞いたよ、アクセル殿。だが、あれは命を救う医師の天幕に上がる叫びと同じたぐいのものではないのか。治…

K.イシグロ『忘れられた巨人』 第九〜十四章

わたしが見てほしいところ、まだ見てくれていないんじゃないかしら、アクセル。(第十三章) 第三部、第九章と十四章は「ガウェインの追憶」と題されていて、ここだけ一人称の語りになっている。そして、アングロ人とサクソン人の間には、血で血を洗う戦いが…

K.イシグロ『忘れられた巨人』 第六〜八章

ネットで英語の書評をいくつか読んでみたのだけれど、この作品を「失敗作」と見る向きも結構あるようですね。正直なところ、一読しての私の感想も、すげー読みにくい上に、結論がけっこう安易じゃね?というところ。それが実態として正しい感想なのか、それ…

K.イシグロ『忘れられた巨人』 第二〜五章

前回の記事を読みなおしてみると、「マル1」とか「マル2」とか書いた部分が全部文字化けしておりました。いや、環境依存文字なのは知ってるけど、日本語のブログだから大丈夫かな、と思ってたのが、そうでもないんですね。・・・・・・聞いてくれているの、…

K.イシグロ『忘れられた巨人』 第一章

理由はよく分からないのですが、オフィスが停電するということで、久方ぶりの定時帰宅。ああ、欧州の初夏、夕べはこれほどに長いのですね。長らく私は季節の感覚をなくしておりました。神、もしくはビルメンの人に感謝を捧げながら、せっかく得た時間をブロ…

M.プルースト『失われた時を求めて』 「スワン家のほうへ」(2)

ブログを書こうと決意すると、何らかのバチでも当たるのか、前回の更新をしてから日付を跨がないと家に帰れないような日々が続いていました。それで、ゴールデンウィークは、人生の一大イベントをやったりしていたもので、何と1か月で数十ページしか読み進ん…

禁煙の話(6)

ぴったり、というわけではないけれど、だいたい禁煙後100日くらい経った。1箇月がすぎたくらいから、鬱症状も改善に向かって、仕事をがんばってみよう、というような気になってくるのだけれど、がんばればがんばるほど意気を挫くようなことが起こるものです…

M.プルースト『失われた時を求めて』 「スワン家のほうへ」(1)

かりに眠れないまま明けがた近くになり、本を読んでいる最中、ふだん寝ているのとずいぶん違う格好で眠りに落ちたりすると、片腕を持ちあげているだけで太陽の歩みを止め、後退させることさえできるので、目覚めた最初の瞬間には、もはや時刻がわからず、寝…

山形浩生・岡田斗司夫FREEex『「お金」って何だろう?』

(岡田)みんながDVDプレイヤーを所持して、衣服も最低限ユニクロレベル。そんな状況は、何十年後どころか数年後にやって来ても不思議はないでしょう。そういう世界で人々にお金を使わせようとしたら、他人との差を煽って欲望を無理矢理かき立てるしかない。…

禁煙の話(5)

禁煙25日目。禁ニコレット14日目。 恐ろしいことに、禁煙開始以来、いちばん体調がよく。そして、いちばん吸いたい。 現在、身体に残っている影響は、早朝起床のみである。朝の3時とか4時とかに目が覚めて、なかなか寝つけない。ときにはそのまま朝まで寝ら…

吉川英治『新・平家物語(三)』

桐のこずえの紫を見るたびに、麻鳥はいいしれない恐怖に打たれた。人にはその褪せ紫の花の傘が、夏隣の象形にも見えるであろうが、かれには、夏を望んでやってきた病魔の肌みたいに見えるのだった。 この花を見るころから秋にかけて、地上には、疫疾、疫痢、…

禁煙の話(4)

禁煙ができると、コントロールが良くなります。 いわば、人生の制球力がよくなります。 生きるコントロールがよくなると、歳をとって急速が落ちてきてもちゃんと試合をつくれるようになります。 ただ、コントロールだけに気をつけてると、だんだんいい子にな…

禁煙の話(3)

これにくらべて、最初にあげた立場、つまり世界を捨てるという立場にあっては、現実生活への影響のしかたは、まったくちがう。永遠の救いへの郷愁は、地上の生活のあゆみ(コース)と形態に対し、ひとを無関心にさせる。地上の生活にこそ、徳が育ち、保たれ…

禁煙の話

禁煙18日目。禁ニコレット7日目。 このブログは書評ブログだったはずだが、禁煙のダメージで読書があまり面白くないので、禁煙について書こう。禁煙すると体調が良くなる、という人と、そんなことはまったくない、という人がいるが、どちらも本当であること…

禁煙の話(2)

大福 男は会社があり続けると思い込んでますからね。でも会社にだって寿命がありますから。六十年ぐらいと言われています。 かっぱ 営業成績が上がり続けるなんてあり得ないじゃないですか。そんなのいつか破綻しますよ。そんなもんにアイデンティティを求め…