21世紀文学研究所

1サラリーマンの読書日記です。

2019-01-01から1年間の記事一覧

ミステリをたくさん読む(11月)

我が家にも良いニュースがあって、初めての娘が生まれた。可愛くてしかたない訳で、世話をしていると本とか読めないかと思っていたが、案外、通勤時間とかでなんとかなるものだった。まあ、スキマ時間にできるのが読書ぐらいになった、とも言えるが。。。 今…

ミステリをたくさん読む(10月)

台風に列島が揺れた先月、私は肩の痛みに慄いていた。右肩が猛烈に痛くて眠れないだけでなく、右手の親指に痺れまで現れ、人には首のヘルニアだと脅されるのだけれど、それまでに住んでいた文京区から、横浜への引っ越しがまさに展開中で病院にも行けない。…

ミステリをたくさん読む(9月)

キャッシュレス決済ポイント還元に乗せられて、PayPayとか使い始めた昨今。アプリ経由のサービスを利用して、ロシア語の本をトランクルームに入れてみました。計9箱。月間ひと箱250円は安いのですが、留学時代、まだ物価の安かったロシアで、「安いからたく…

ミステリをたくさん読む(8月)

繰り返しにはたしかに、人間の心を摩耗させるものがあって、日々の繰り返しが限界に来るタイミングで、社会は夏休みを取得していると思う。そんなわけで、ゴールデンウィークに挫折したナボコフをもう一度ひもといてみたが、150ページ付近で挫折した。ナボコ…

ミステリをたくさん読む(7月)

ひたすらに雨が降り続いた7月。だんだんと憂鬱になり、活字も頭に入ってこなくなる。ラスコーリニコフを狂わせたのも、ペテルブルクの寒さでも暗さでもなくて、湿気だったなあ、と思う。 読んだ量は多く見えるが、スティーヴン・キングはゴールデンウィーク…

ミステリをたくさん読む(6月)

30年間つきあった差し歯が根元から折れ、前歯を抜く羽目になった。親知らずを抜いた時にも、そこそこの感慨はあったが、仮にあれは抜くことが当たり前の部分だったとすれば、最後まで使うつもりだった自分の一部を失うのは、これが初めてのことになるのだ。 …

ミステリをたくさん読む(5月)

ナボコフは読み始めたところでGWが終わり、終わるとちょっとストレスに弱くなって、難しい本は読まなくなった。じっくりと文学に取り組む時間はやってくるだろうか。 今月のミステリは6冊。年始から累計31冊読んだが、結果として趣味が偏ってきた。 若竹…

小山田浩子『工場』

仕事に身は入らないし、大体身が入ったところで大差はない単純作業なのだが(あらためて考えると、この作業を誰かにさせるために余分に賃金を払おうという工場の考えは酔狂だ。機械でも開発するがいい)、それでもあまりぼーっとしていると逆に辛くなってく…

平成の30冊

すごく今更感があるけれども、時間がある今、触れておこう。朝日新聞の「平成の30冊」についてである。 ところで平成になったとき、私はたしか九歳だった。そう思えば、私が読書らしい読書をしたのはすべて平成のうちのことで、同時代作品というのは、すべて…

ミステリをたくさん読む(4月)

特に行くところもやることもなく、平成最後のGWを過ごしている。本を読む時間はふんだんにあるので、ずっと積読だったナボコフの『賜物』でも読んでみようかと思っているが、まだ手をつけないまま、読みかけのミステリと現代小説をパラパラ。 今月は6冊。半…

笙野頼子『タイムスリップ・コンビナート』

なにが平成だ、随分言ってくれる、と思いつつもどうでもいいやという感じでつい聞き流してしまう。だって嫌だったら断ってしまえばいいのである。どうせ何の覚えもない相手なのだから。(15ページ) 「タイムスリップ・コンビナート」の初出は1994年、つまり…

福永武彦『草の花』

僕は夢中になって生きていたし、世界というのはそういうもの、憎悪も残酷も無慈悲もなくて、愛されあれば足りるものと、そう思っていたんだ。今は違う、今は、僕の世界と外部の現実とはまったく別のものだということが、僕にははっきり分かっている。僕達は…

ミステリをたくさん読む(3月)

鬱っぽい三月だった。くしゃみも出るし、ついに花粉症デヴューしたのかもしれない。でも、読んだ本は当たりばかりだった。勢いに乗って7冊。 米澤穂信『満願』(新潮文庫)★★★★★ 若竹七海『静かな炎天』(文春文庫)★★★★★ 法月綸太郎『ノックス・マシン』(…

四十男、同世代作家を読む(2)米澤穂信

四十代前後の人気作家をそれぞれ五冊くらいずつ読んで、自分の見てきた時代とどのように重なっているのか、あるいは重なっていないのか、を確かめるつもりで始めた。だから、二、三か月に一人くらい書けるのではないかと思っていたが、読みはじめるとそれほ…

ミステリをたくさん読む(2月)

二月は初めてアメリカ合衆国に行った。人生初だった。四十歳まで計、九年間も海外で暮らしていたのに。 訪れたのはサンフランシスコとニューヨーク。折角だから、それぞれを舞台にしたミステリを読もうと思い、本棚からエルロイとマクドナルドを引っ張り出し…

朝吹真理子『きことわ』

誰の目でみているのかがわからなくなる。永遠子は貴子に、春子に、和雄にもまたスライドしていくようだった。しかし幾億年むかしのことも幾光さきの場所も夢の中ではいつもいまになり、ひかりなどがのろいものにおもえる。過ぎ去った一日も百年も同じように…

ミステリをたくさん読む(1月)

本厄の年を迎えた。私のことだ。 これまで無限に思えていた可能性が、だんだんと限られたものになっていく。あと40年、ボケずに生きられたとして、たとえば読書なら1年に100冊読んで4000冊。たかが知れたものである。選択をクリアにしていかなけれ…