21世紀文学研究所

1サラリーマンの読書日記です。

2008-08-01から1ヶ月間の記事一覧

内田樹『街場の現代思想』

もう10日くらい前なのですが、内田樹の『街場の現代思想』を読みました。だから内容はもうほとんど忘れているのですが、模擬人生相談形式で、仕事について、結婚について、大学について、なやましいことの数々を非常に常識的にこたえる本であったと思いま…

馳星周『不夜城完結編 長恨歌』

やあ、20そこそこのオレ、元気かい? キミは気分が鬱になると、馳星周の小説を読む性癖があるね。とくに『不夜城』は、ドラマチックかつ人間不信度合いが全開で、お気に入りだね。そんなに世の中が信用できないのかな? そんな『不夜城』もついに完結編の…

寺山修司『書を捨てよ、町へ出よう』 第四章

アレクサンドル・ブロークとアンドレイ・ベールイは、隣りあわせに住みながら書簡を交わしていたと言います。ですから僕が、架空のあなたに手紙を書く形でブログするのも、赦されていいことのように思います。なぜ架空のあなたに書くかと言えば、『デトロイ…

伊坂幸太郎『重力ピエロ』

帰省している間、携帯で更新していたのですが、カテゴリ分けなどうまく編集できない部分が残ってますね。 それはさておき、『重力ピエロ』は、宮部みゆきの『クロスファイア』に似たテーマ性を持つ作品と言えるだろう。だが、イマイチ感情移入できないのは、…

A.エルキンス『古い骨』

ブルターニュに邸宅を持つ、老ギョーム・デ・ロシュは遺言を残すべく、一族郎党を集めた。しかし、その家族会議が始まる前に、彼はモン・サン・ミッシェルの浜辺で溺死してしまう。そしてロシュの地下室からは、ナチスに関係あるらしい古い骨が出てくる。た…

安岡章太郎『15の対話』 対話七「日本人は生き残れるか」

ずっと「つまみ読み」をしてきた一冊だが、お盆で時間ができたので、通し読みにチャレンジ。だが、「積ん読」にしておいて五年あまりにもなる本だけに、読むこと自体にすこし歴史が発生している。 さて、タイトルを見ればわかるように、この本は安岡章太郎の…

東野圭吾『容疑者Xの献身』

ドストエフスキーが描こうとした「もっとも美しい人」ムイシュキン公爵は、必ずしも完璧に美しくないからこそ、美しかった。東野圭吾が描こうとした完璧な愛は、数学のように一点の曇りもないからこそ、うさん臭い。 いきなり暴言を吐いてしまったが、この作…

Ⅰ.マキューアン『贖罪』 第三部

人間とは、まず第一にひとつの物体であって、たやすく裂けるが修復は難しいのだ。(下巻192ページ) 第一部でマキューアンが描いたドラマが、できそこないのパロディのようなものであるとしたら、第二部の戦場、第三部の病院を描くこの筆は一体なにものによ…

I.マキューアン『贖罪』 第一部

姉もまた、意識と動作が形作る、砕ける寸前の波のような境界線の後ろに本当の自分を隠し持っており、顔の前に指を立ててそのことを考えこんだりしているのだろうか。人はみなそうなのだろうか、たとえば父親は、ベティは、ハードマンは? 答えがイエスである…

篠田節子『聖域』

久々にエンターテイメント小説を読んで、読むのがやめられないという体験をした。けれども、篠田節子の『聖域』に、特別な登場人物はあらわれない。退職したアル中の編集者、篠原の荷物を整理していた29歳の実藤は、「聖域」と題された未完の原稿に出逢う…

PLAYBOY9月号 『詩は世界を裸にする』

齢30にして洋ピンに目覚めたわけではない。ただ白の大判の上質紙に詩のことばが踊っている場面にはエロティシズムを感じる。普段せまい空間に押し込められている言葉が(別に思潮社が悪いわけではないけれど)、大きな場所にのびのびしている、というだけ…

周達生『世界の食文化2 中国』 第三章

ふだん、二段ベッドの位置にあるところで寝ている(下の段は本棚)ので、足を怪我している間は床にフトンを敷いて寝ていた。そんなわけで、いつも寝る前に読んでいたこの本、およそ二箇月ぶりの登場となる。 「虫宴は成立するのか」と題された第三章の一部は…