21世紀文学研究所

1サラリーマンの読書日記です。

山形浩生・岡田斗司夫FREEex『「お金」って何だろう?』

(岡田)みんながDVDプレイヤーを所持して、衣服も最低限ユニクロレベル。そんな状況は、何十年後どころか数年後にやって来ても不思議はないでしょう。そういう世界で人々にお金を使わせようとしたら、他人との差を煽って欲望を無理矢理かき立てるしかない。そういうところまで行き着いたとき、貨幣経済はもうそれ以上動かしようがないんじゃないでしょうか。

 禁煙33日目。禁ニコレット22日目。
 このブログのレコーディング効果なのか、禁煙はうまく行っている。徐々にだが、本も面白くなってきた。しかも、今日は休日出勤という、ストレスフルな環境をガム噛むだけでクリアできた。自分をほめてあげたい。
 だいたいネットで禁煙ブログを見ると、一箇月目くらいで終わっているが、ちょうど、それくらいが「自分が禁煙しているという事実」に興味をなくすころのようだ。さよなら馬謖。ところで煙草と別れてから、チョコレートがやたらうまい。そうか、これからは姜維(=チョコ)と生きて行くのか・・・それはさておき、この新書の写真を見る限り、岡田斗司夫さんのレコーディング・ダイエットは、大分リバウンドしたようではあるが。
 この本は、トマ・ピケティの翻訳が売れているらしいので、なんかSFの翻訳の人じゃなくて経済学者だったような気がしてきた山形浩生さんに、オタキング先生がお金の質問をムチャぶりっぽく聞く本である。岡田さんの評価経済のアイデアそのものは、正直「面倒くさそう」と感じたのだが、なんか枝葉のところで二つくらい心から共感した部分があるので、それについて書いておく。
 まずは、どこのページか正確には思い出せないくらい何回か出てくるのだが、「そんなつまらないこと(とくにこだわりのない生活必需品をつくることや、輸出入など)は、大企業にまかせておけばいい」という感覚。あんまり誰もはっきり言っていなかったが、これって社会の中で当たり前になっているのではないだろうか? つまり、生活の中の、「ユニクロでいい」部分として。
 ここのところ、感じていた違和感として、大企業の社長が「イノベーション」と言うのを聞くとき、どうしても、手塚治虫の『アドルフに告ぐ』で、「もうすぐ連合国を一掃する新兵器ができるぞ! それは原子爆弾という新兵器だ!」と言っているヒトラーの顔が思い浮かんでしまう。随分まえに、ここにも書いたような気がするが、イノベーションって環境や状況に適応することではあっても、ミラクル新兵器が環境や状況を一変してくれることではないはずなのだが、「研究開発費を増やしてイノベーションを・・・」と言うときの経営者の顔は、どう見ても新兵器の誕生を祈っていて、涎を垂らしたヒトラーに見えるのである。
 一方で、私もそれなりに大きい企業の社員だというのはまあ受け止めておいて、それでも一人の消費者として考えてみるとき、やっぱり大企業、というかグローバル企業に求めているのって、「スタンダード」だな、と思う。つまり、「生水とか大丈夫かな?」という感じの国に旅行して、とりあえずスークだけどコカコーラは安全なんじゃないか、と思う感じ。高品質、一定の価格、どこにでもある、の三拍子さえ揃っていれば、そんなに新技術とか新しい価値とか必要ではないように思うのである。
 共感したもう一点は、作家の収入について、1500円の本を1年に1万部売って、印税率が10%だと、年収が150万円になってしまうらしい。でも、1万部も売れる本を書ける人って、150人から1万円ずつくらいもらえるくらいは面白いんじゃね?と思っていたが、実践している人はいるんですね、やはり。

(『「お金」って、何だろう? 僕らはいつまで「円」を使い続けるのか?』 光文社新書