21世紀文学研究所

1サラリーマンの読書日記です。

2015-06-01から1ヶ月間の記事一覧

雑感

「マンガいまさら気づいたシリーズ」『鋼の錬金術士』のホーエンハイムになる前の奴隷が二十三号と呼ばれているが、これって芥川の「河童」の語り手、患者第二十三号から来ているのですね。たぶんですが。

K.イシグロ『わたしたちが孤児だったころ』 Part2

もう遅い。最後の文章を書きとめてから、かなり時間が経ってしまった。それなのにわたしはまだこうして机の前に座っている。いつのまにかこれらの思い出に浸っていたのだろう。その思い出の中には、何年も頭に浮かんでこなかったものもある。(Part2 9) 昨日…

K.イシグロ『わたしたちが孤児だったころ』 Part 1

そうはいっても、このようなことはおそらくいずれ起こっただろう。実を言えば、ここ一年ほど急激に過去の思い出で頭がいっぱいになっていたからだ。そうなったのは、子供時代や両親の思い出が、最近ぼやけはじめたのに気がついたからだった。ほんの二、三年…

船戸与一『山猫の夏』

舞台はブラジル北東部の町、エクルウ。この町は100年のむかしから、アンドラーデ家とビーステルフェルト家に支配されてきた。町の権益をめぐり、血で血を洗う抗争をくり返す両家。だが、ある夏の日、アンドラーデの一人息子フェルナンと、ビーステルフェルト…

K.イシグロ『忘れられた巨人』第十五〜十七章

来るなら来い。来るがよい。お忘れか、アクセル殿。わしはあの日、貴殿と会っておる。貴殿は耳に残る子供や赤子の泣き声のことを語った。わしもそれを聞いたよ、アクセル殿。だが、あれは命を救う医師の天幕に上がる叫びと同じたぐいのものではないのか。治…