21世紀文学研究所

1サラリーマンの読書日記です。

2009-07-01から1ヶ月間の記事一覧

横山秀夫『震度0』

さて、ここのところ3冊ばかり、横山秀夫のミステリーを読んだのだが、彼の作風は(筒井康隆+都築道夫)÷2なのではないか、と思うに至った。おそらく都築道夫は『ルパンの消息』の設定から、そして筒井康隆はこの『震度0』の書きぶりから、そんな無責任な…

カズオ・イシグロ『日の名残り』

そのように忠誠を誓うことのどこに、品格に欠けるところがありましょうか? それは、不可避の真実を真実として受け止めることにほかなりますまい。私どもが世界の大問題を理解できる立場に立つことは、絶対にありえないのです。とすれば、私どもがたどりうる…

加賀まりこ『純情ババアになりました』

《人類多しといえども鬼にも非ず蛇にも非ず、殊更に我を害せんとする悪敵はなきものなり。恐れ憚ることなく、心事を丸出しにして颯々と応接すべし》(「つんのめるように生きてきた」から福澤諭吉の引用) 『沸騰時代の肖像』という、60年代のスターの写真を…

堀江敏幸『いつか王子駅で』

なすべきことを持たずに一日を迎え、目の前に立ちふさがる不可視の塊である時間をつぶすために必要な熱量は、具体的ななにかを片づける場合よりはるかに大きい。いま私がひどく不機嫌になりかかっているのは、この目的のない純粋な暇つぶしというう美しい行…