21世紀文学研究所

1サラリーマンの読書日記です。

新書

山形浩生・岡田斗司夫FREEex『「お金」って何だろう?』

(岡田)みんながDVDプレイヤーを所持して、衣服も最低限ユニクロレベル。そんな状況は、何十年後どころか数年後にやって来ても不思議はないでしょう。そういう世界で人々にお金を使わせようとしたら、他人との差を煽って欲望を無理矢理かき立てるしかない。…

佐々木俊尚『「当事者」の時代』

簡単に「読書メーター」で感想を書こうとしたら、文字数が全然足りなかった。困ったものだ。困ったので、ここで書きたいだけ書く。 書いてあることに納得できなくはないのだが、全体に主語がない本である。戦後の復興を進めるにあたり、大衆としての日本人が…

鷲田清一『じぶん・この不思議な存在』

自己同一性の免疫力が低下しているからこそ、じぶんではないもの、異質なものを一種のウイルスとしてとらえ、身体の内部あるいは表面から、身体をとりまく環境から、そういう遺物を徹底的に排除していこうとすると思われるからである。(2「じぶんの内とじぶ…

鴻巣友季子『翻訳教室』 「第一章 他者になりきる」

では、この壁を打ち破って想像力の枠を広げるにはどうしたらいいでしょう? いきなり想像力だけを広げることはできません。想像力を豊かにするには、経験や知見の土台が欠かせないからです。しかし経験を広げ、知見を深めるといっても、例えば被災地に赴いて…

木村榮一『ラテンアメリカ十大小説』

私ごときの体験を、木村榮一のような大学者に擬して考えることはたいへん失礼な話だが、外国文学を読みこめば読みこむほど、「普通」の感想しか出てこなくなるのではないだろうか。日本語で読み、あくまで日本人の感覚で作品を処理しているときこそ、妄言・…

宮田光雄『ナチ・ドイツと言語』

そこから、さらに政治的ジョークは、《通風弁》であったばかりではなく、そうした体制への順応にたいする《心理的アリバイ》(H・シュバイツァー)としての機能もあったかもしれないという、まことにうがった解釈も出てくる。すなわち、権力からの締めつけに…

猪木武徳『戦後世界経済史』 第一章第2節

つまり民主国家にとって重要なのは、国民が倫理的に善い選択を行い得るためには、まず十分な知識と情報が必要だということである。いい換えれば、難問を適切に選択し処理するための倫理(モラル)を確かなものにするには、知性と情報が不可欠なのである。(…

猪木武徳『戦後世界経済史』 第一章第1節

「グローバル化」が行き過ぎたことによって、逆に保護主義による「ブロック化」へと振り子は振れたのである。(10ページ) 本書は日本経済新聞の「2009年エコノミストが選ぶ経済図書ベスト1」に選出されたわけで、私もビジネスマンの端くれとして手にとって…

森永卓郎『年収崩壊』

お金に関する新書三部読み、第二段。年収300万円時代という言葉を創出した、森永先生の新書だが、売れた後の本だからか、下記の勝間氏の本に比べて押しは弱い。所得格差の拡大によって結婚するメリットがなくなった、あるいは結婚することができなくなっ…

鹿島茂『フランス歳時記』

フランスを知るために、ということで読みはじめた一冊。月ごとの章立て、その中で、季節に関するエッセイ+各月にまつわる守護聖人の紹介+各月にまつわる有名人の紹介、とメジロオシの内容。しかし、自分でもただの無害な変態と認識していたサドが、死刑判…

勝間和代『お金は銀行に預けるな』

かならずしもこの人の言っていることに納得できるわけではないのだが、自分の言いたいことを確固として持ち、社会を変えていこうという発想のもと、これだけ分かりやすい概説書をものした、ということは尊敬に値する。まちがいなく名著である。ちなみに、銀…

本田透『なぜケータイ小説は売れるのか』

もうお分かりだろう、ケータイ小説が売れているのではない。実は小説が売れていないのだ。(第四章) 最近、『電波男』が文庫化されたが、本書は『電波男』や喪男三部作のような著者の魂の叫びとは異なり、ライター本田透としてのルポである。しかし、これが…

寺尾紗穂『評伝 川島芳子』 第二章

ひととき大学院の世界に身をおいた人間としては、修論を本にするということ自体が、あまりに大それたことに見えてしまうのだが、そんなことを考えずに新書として読めば抜群に面白い。本書内でも触れられている上坂冬子『男装の麗人・川島芳子伝』(文春文庫…

岡田斗司夫『いつまでもデブと思うなよ』

比較的、流行ものとマスコミに流されやすいたちなので、こういう本読んでしまう。体脂肪率も高くなってきたので、それを抑制する意図もあったりして。 内容は非常に明確で、会社経営でも悪化すれば、数的記録をチェックして悪くなった原因を探すのが当然なの…

多谷千香子『「民族浄化」を裁く』 第三章

アメリカ大統領選の陰で、ほとんど無視されているようなニュースではあるが、セルビアのコソボ自治州が2月17日に独立を宣言した。アメリカは賛成しているが、ロシアやスペインなどは反対している状況であり、当事国セルビアでは、独立に対する賛否が一致…