21世紀文学研究所

1サラリーマンの読書日記です。

ミステリをたくさん読む(5月)

 ナボコフは読み始めたところでGWが終わり、終わるとちょっとストレスに弱くなって、難しい本は読まなくなった。じっくりと文学に取り組む時間はやってくるだろうか。

 今月のミステリは6冊。年始から累計31冊読んだが、結果として趣味が偏ってきた。

 

若竹七海『さよならの手口』(文春文庫)★★★★☆

レイモンド・チャンドラー『リトル・シスター』(村上春樹訳、ハヤカワ文庫)★★★★☆

麻耶雄嵩神様ゲーム』(講談社文庫)★★★★

小林泰三『アリス殺し』(創元推理文庫)★★★★

レイモンド・チャンドラー『プレイバック』★★★☆(村上春樹訳、ハヤカワ文庫)

白井智之『人間の顔は食べづらい』★★★(角川文庫)

 

 一人称視点で全てを語るハードボイルドの魅力は、つまるところ主人公の怒りだと思う。巻きこまれ体質でおせっかいな葉村晶の怒りが、やはり好きだ。『さよならの手口』の怒りは、『錆びた滑車』で語られたものに比べれば、幾分直截的なものだったが、それでも久方ぶりに感情移入できる探偵である。

 ひょっとしてこれもハードボイルドの魅力なのかと思うのだが、レイモンド・チャンドラーの小説は、わりとキャラ萌え小説である。確かに屈折した物言いで「卑しき街を行く騎士」と守られる少女、とか実にラノベ的。さらに村上春樹訳だとその要素に拍車がかかるように思う。『リトル・シスター』のオーファメイはヤンデレ、『プレイバック』のヒロインも結構なツンデレ。ハードボイルドと萌えの影響関係について、どこかに論文ないですかね?

 『神様ゲーム』は読み終わってから興奮する、という変わった小説。誰もが読んでから他の人の解釈をネット検索すると思うが、思ったより良い解釈が見つからなかった。やはり結論にちょっと無理があったのかと思い、少し低めの点数に。

 『アリス殺し』も夢と現実がリンクする、トリッキーな構成。アリス調の会話文は見事だったし、解決篇はスリリングであったものの、中盤少しダレたかも。

 『人間の顔は食べづらい』はホラー的な恐ろしさを期待していたのだが、グロい謎解きだった。ただ、謎解きにあまり関心しなかった。

 そんなわけで、年間ベスト10を更新。点数と若干の矛盾はありますが。

 

『錆びた滑車』

『高い窓』

『満願』

『静かな炎天』

『春にして君を離れ』

『涙香迷宮』

ブラック・ダリア

『さよならの手口』

『ブラウン神父の童心』

『ノックス・マシン』