21世紀文学研究所

1サラリーマンの読書日記です。

ミステリをたくさん読む(7月)

 ひたすらに雨が降り続いた7月。だんだんと憂鬱になり、活字も頭に入ってこなくなる。ラスコーリニコフを狂わせたのも、ペテルブルクの寒さでも暗さでもなくて、湿気だったなあ、と思う。

 読んだ量は多く見えるが、スティーヴン・キングゴールデンウィークくらいからだらだら読んでいたもの。

 

桐野夏生『OUT』(講談社文庫)★★★★★

アガサ・クリスティー『五匹の子豚』(クリスティー文庫)★★★★☆

北方謙三『檻』(集英社文庫)★★★★

スティーヴン・キング『11/22/63』(文春文庫)★★★☆

若竹七海『ヴィラ・マグノリアの殺人』(光文社文庫)★★☆

 

 ランキングが固定化してきたので、自分の中でのオールタイムベストを少しずつ投入することにした。そんなわけで、桐野夏生『OUT』。四人の主婦たちにまつわる生活と金額の、圧倒的なリアリティと、19世紀文学の登場人物にも匹敵する雅子の存在感。何度読んでも名作。最初に読んだ学生の頃には、「裏社会の描写がステロタイプ」というような批評に腹を立てていたが、今読めばそれは的を射ているかも。

 クリスティーの『五匹の子豚』は章立ての時点で容疑者が五人に絞られていて、それでもなお真相に意外性があるという、綺麗な作品。現代ミステリを読んでいて、結末がなんだか自信のない感じだったりするのが、この終わり方は素晴らしい。

 そして北方ハードボイルド初読み。冒頭のスーパーの縄張り争いの話がシャープに記憶に残り、後半、少しプロットがこみいってからもキャラが立っていて読みやすい。

 キングの『11/22/63』は、冒頭のダイナー経営者が1日で10キロ痩せる、というくだりがキングっぽくて大好きだったのだが、中盤後半やたら長くて大変だった。タイムパラドクスに対する配慮も、面白いんだけれどこれ『タイムパトロールぼん』で見たなあ、と思うと、藤子先生の偉大さばかりが際立つ。

 『ヴィラ・マグノリアの殺人』は、若竹作品にしては期待はずれ、というか、人物関係が入り組んで、覚えるの大変だったのにこのオチかい、というところがキツかった。

 

 これでちょうど年始から40冊。ベスト10はこんな感じ。

 

『錆びた滑車』

『OUT』

『満願』

『静かな炎天』

『春にして君を離れ』

『涙香迷宮』

『私が殺した少女』

『五匹の子豚』

ブラック・ダリア

『さよならの手口』