21世紀文学研究所

1サラリーマンの読書日記です。

ミステリをたくさん読む(1月)

本厄の年を迎えた。私のことだ。

これまで無限に思えていた可能性が、だんだんと限られたものになっていく。あと40年、ボケずに生きられたとして、たとえば読書なら1年に100冊読んで4000冊。たかが知れたものである。選択をクリアにしていかなければ、何も読めずに朦朧の世界へ行くことになるだろう。

今年は、ミステリを読むことにした。50冊は読もう。「同世代の作家を読む」ことも続けていくが、昨年から仕事の内容が大きく変わって、その勉強もせねばならない。あまり風呂敷を広げられない。読みやすさととっつきやすさを考慮して、ミステリの古典をたくさん抑えるというのは、よい選択だと思っている。

思えば、今まで中年だと思っていた人たちに、「1年の目標は紙に書くべきだ」と言われ続けてきた。目標をクリアに設定したくなるというのは、冥府に近づいたひとつの印なのかも知れない。

ところで、ミステリにしたのは、霜月蒼『アガサ・クリスティ完全攻略』が大変おもしろく、また実用的であったことに影響されてもいる。★=1点、☆=0.5点で評点するスタイルが分かりやすかったので、真似する。

 

アガサ・クリスティ『春にして君を離れ』(クリスティ文庫)★★★★☆

竹本健治『涙香迷宮』(講談社文庫)★★★★☆

チェスタトン『ブラウン神父の童心』(創元推理文庫)★★★★☆

米澤穂信『折れた竜骨』(創元推理文庫)★★★★

橘玲マネーロンダリング』(幻冬社文庫)★★★★

早坂吝『メーラーデーモンの戦慄』(講談社ノベルズ)★★★☆

米澤穂信『秋季限定栗きんとん事件』(創元推理文庫)★★★

 

1月は冬休みもあったので7冊。人の死なない、『春にして君を離れ』のサスペンス感が圧倒的だった。ただこの内容を「実質的な殺人」とまで言う向きには違和感を感じるので、クリスティの責任ではないかも知れないが4.5点。

作りこみの凄まじさにおいては48首のオリジナルいろは歌が登場する『涙香迷宮』がダントツ。しかし、48首読む流れが若干だれてしまうところが玉に瑕だった。

『ブラウン神父』に関しては脳が疲れているときに読んだので、魅力を100パーセント理解したとは言い難く、再読リストへ。

中世のイングランドを舞台にしたミステリ『折れた竜骨』はすごく好きな世界観。ただちょっと魔法の設定が多すぎる気も。

マネーロンダリング』に小説として4点は多すぎの気もするが、過去に傷を持つスペシャリストの主人公、謎の美女というベタベタスリラーの中で、蘊蓄を飽きずに読ませる手法だけでも感嘆に値する、と思う。ただ、安アパートを隠れ家にしたら、中国人が忍びこんできた、というくだり、そのまま『不夜城』にあったなあ、と。

メーラーデーモン』はツィッターと『オイディプス王』を絡めた叙述トリックが面白かったが、シリーズが進むにつれて探偵のキャラが弱くなっている感は否めない。

『栗きんとん』はうまいけど主人公たちの心性が好きじゃないなあ、しかしそんな上沼恵美子みたいな批評もどうかなあ、と思っていたが、よく考えると作中のミスリードがかなりアンフェアなので、それを理由に3点。