21世紀文学研究所

1サラリーマンの読書日記です。

ミステリをたくさん読む(8月)

 繰り返しにはたしかに、人間の心を摩耗させるものがあって、日々の繰り返しが限界に来るタイミングで、社会は夏休みを取得していると思う。そんなわけで、ゴールデンウィークに挫折したナボコフをもう一度ひもといてみたが、150ページ付近で挫折した。ナボコフに足る心の平安を得るのは、いつの日だろうか。

 そんなわけで、軽いミステリばかりを読み続けた夏休みの月。心なしかサイコ色が強い。11作品読んだので、とりあえず年間目標の50はクリア。

 

アガサ・クリスティー『カーテン』(クリスティー文庫)★★★★☆

原尞『さらば長き眠り』(ハヤカワ文庫JA)★★★★☆

辻村深月『オーダーメイド殺人クラブ』(集英社文庫)★★★★☆

深緑野分『戦場のコックたち』(創元推理文庫)★★★★

スティーグ・ラーソン『ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女』(ハヤカワ文庫)★★★★

深町秋生バッド・カンパニー』(集英社文庫)★★★★

辻村深月『鍵のない夢を見る』(文春文庫)★★★★

桐野夏生『ローズガーデン』(講談社文庫)★★★☆

薬丸岳『Aではない君と』(講談社文庫)★★★☆

原田マハ『暗幕のゲルニカ』(新潮文庫)★★★

スティーグ・ラーソン『ミレニアム2 火と戯れる女』(ハヤカワ文庫)★★☆

 

 ミステリばかりを読み続けると感じる、クリスティーのクオリティー。まあ、『アガサ・クリスティー完全攻略』で五つ星がついたのばかり読んでいるからもあるのですが。その品質を一言で言うなら、必ず驚きがあること。『カーテン』のオチも、無茶があるっちゃあるんですが、素直に驚けるところがすごい。

 原尞の沢崎シリーズは、大外れの第一作からは想像できないほど、第二作、第三作とどんどんカドが取れて、熟成された味わいになっている。『さらば長き眠り』の前段は、ミステリとしての驚きも十分で、「これは最高傑作か!」と思ったのだが、オチはちょっと無理があった。

 辻村深月は初読みで二冊。ちょっと、カズオ・イシグロを彷彿とさせるような、現実からの浮遊感があって、とても良かった。

 『戦場のコックたち』はとても志の高い作品。ノルマンディー上陸作戦をこの解像度で表現できるかと思うと、感嘆しかない。ただ、戦争ものとして、トルストイ大岡昇平と比べるのは無理としても、マキューアンの『贖罪』と比べても、痛みの表現が足りないようには感じる。ただ、それくらいの作家たちと比肩できる作品ではあって、4点なのはミステリとして評価したから。

 『ミレニアム』はスウェーデン版の映画でも見た「1」が、とても面白かったので「2」まで一気読みしたが、「2」でちょっとテンションが落ちた。ちょっと前に読んだジェフリー・ディーヴァーもそうだが、「驚き」はヴィジュアルやアクションで表現したい、という欲求があるのかな、と思う。

 深町秋生の『バッド・カンパニー』は好きな作品。軽めのアクションという意味で、漫画の『バイオレンスアクション』や『今日からヒットマン』とかに通じるものがある。

 『ローズガーデン』は村野ミロものの短篇集。表題作がイマイチだったので3.5にしたが、他の作品は良かった。

 『Aではない君と』は加害者家族の立場に立った作品で、ヒリヒリする感情とともに一気読みしてしまうパワーがある。3.5は辛いのだが、真相がちょっとそれでいいのかしら、と思うところがあったので。

 『暗幕のゲルニカ』は話は魅力的なのだが、とにかく説明が長かった。この点、『ミレニアム』などはやはり説明を面白く読まさせくれるので、そこに違いがあるかと思う。

 五十冊超えたので、自分ランク順に全部並べてみよう。並べてみたらこれまで漏れていたものも見つけた。。。

 

(星5)『錆びた滑車』『OUT』『高い窓』『満願』『静かな炎天』(星4.5)『カーテン』『春にして君を離れ』『涙香迷宮』『私が殺した少女』『リトル・シスター』『五匹の子豚』『ブラック・ダリア』『さらば長き眠り』『さよならの手口』『ブラウン神父の童心』『ノックス・マシン』『オーダーメイド殺人クラブ』(星4)『さむけ』『戦場のコックたち』『ミレニアム1』『神様ゲーム』『スタイルズ荘の怪事件』『刑事マルティン・ペック 笑う警官』『アリス殺し』『天使のナイフ』『折れた竜骨』『バッド・カンパニー』『マネーロンダリング』『鍵のない夢を見る』『果てしなき渇き』『ボーン・コレクター』『生ける屍の死』『檻』『古書店アゼリアの死体』『ビブリア古書店の事件手帖 栞子さんと奇妙な客人たち』(星3.5)『ローズガーデン』『Aではない君と』『11/22/63』『プレイバック』『教場2』『その可能性はすでに考えた』『首無しの如き祟るもの』『メーラーデーモンの戦慄』(星3)『秋季限定栗きんとん事件』『人間の顔は食べづらい』『八月の降霊会』『暗幕のゲルニカ』(星2.5)『ミレニアム2』『真実の10メートル手前』『ヴィラ・マグノリアの殺人』