21世紀文学研究所

1サラリーマンの読書日記です。

ミステリをたくさん読む(10月)

 台風に列島が揺れた先月、私は肩の痛みに慄いていた。右肩が猛烈に痛くて眠れないだけでなく、右手の親指に痺れまで現れ、人には首のヘルニアだと脅されるのだけれど、それまでに住んでいた文京区から、横浜への引っ越しがまさに展開中で病院にも行けない。。。

 結局MRIを撮って、ストレートネックによる小さなヘルニアがあることが分かった。古井由吉ばりの大手術は必要なく、姿勢に気をつけていれば大抵治るということなので、椅子だけ高級なものを買った。

 首に良い訳のない読書。それでも通勤が長くなったことにより、ミステリ読みは新規6に再読1と捗った。

 

若竹七海『悪いうさぎ』(文春文庫)★★★★☆

若竹七海依頼人は死んだ』(文春文庫)★★★★

ヘニング・マンケル『白い雌ライオン』(柳沢由美子訳、創元推理文庫)★★★★

原尞『愚か者死すべし』(ハヤカワ文庫JA)★★★☆

ジェイムズ・エルロイLAコンフィデンシャル』(小林宏明訳、文春文庫)★★★☆

八木圭一『一千兆円の身代金』(宝島社文庫)★

 

 『錆びた滑車』を再読してやっぱり素晴らしかった余勢を買って、初期葉村シリーズ二作を攻めた。最近の三作と比べるとイヤミス要素が強いのだが、それでも葉村さんの魅力は健在。この人、フィリップ・マーロウやサム・スペードと比べても推理をせず、ただただ巻きこまれるだけなのだが、それでも揺るがない信念の魅力がある。

 そして巻きこまれると言えば、スウェーデンの田舎の警官が、ネルソン・マンデラ暗殺計画に巻きこまれ、暗殺者とタメに戦う『白い雌ライオン』。追う目線と、追われる目線が交錯するこの書き方って、考えてみると『新宿鮫 毒猿』とかの雰囲気ですが、長くてもサスペンスが維持されるので読みやすい。

 一方、『愚か者死すべし』は裏の陰謀のスケールが大きくなったにも関わらず、沢崎の一人称が貫かれているので、逆に物語に入りこみにくくなったという印象。

 視点と言えば三人の警官の視点が交錯する『LAコンフィデンシャル』だが、こちらは集中力続かず、正直話がよく分からなくなってしまった。

 最後に『一千兆円の身代金』だが、ちょっときつかった。初見で『大誘拐』のオマージュなのだろうな、と思ったが、『大誘拐』ほどの犯人の魅力もなく、何よりもミステリ要素が皆無だった。

 

(星5)不夜城『錆びた滑車』『OUT』マルタの鷹』『高い窓』『満願』『静かな炎天』(星4.5)『カーテン』『春にして君を離れ』『涙香迷宮』『私が殺した少女』『リトル・シスター』『五匹の子豚』『ブラック・ダリア』『さらば長き眠り』『さよならの手口』『ブラウン神父の童心』『悪いうさぎ』『ノックス・マシン』『オーダーメイド殺人クラブ』(星4)『さむけ』『戦場のコックたち』『ミレニアム1』『依頼人は死んだ』『神様ゲーム』『スタイルズ荘の怪事件』『白い雌ライオン』『ビッグ・ノーウェア』『刑事マルティン・ペック 笑う警官』『アリス殺し』『天使のナイフ』『折れた竜骨』『バッド・カンパニー』『マネーロンダリング』『鍵のない夢を見る』『果てしなき渇き』『ボーン・コレクター』『生ける屍の死』『檻』『古書店アゼリアの死体』『ビブリア古書店の事件手帖 栞子さんと奇妙な客人たち』(星3.5)『ローズガーデン』『Aではない君と』『愚か者死すべし』『11/22/63』『プレイバック』『教場2』『その可能性はすでに考えた』『LAコンフィデンシャル』『首無しの如き祟るもの』『メーラーデーモンの戦慄』(星3)『秋季限定栗きんとん事件』『四日間の奇蹟』『人間の顔は食べづらい』『八月の降霊会』『暗幕のゲルニカ』(星2.5)『ミレニアム2』『真実の10メートル手前』『ヴィラ・マグノリアの殺人』(星1)『一千兆円の身代金