21世紀文学研究所

1サラリーマンの読書日記です。

馳星周『不夜城完結編 長恨歌』

 やあ、20そこそこのオレ、元気かい? キミは気分が鬱になると、馳星周の小説を読む性癖があるね。とくに『不夜城』は、ドラマチックかつ人間不信度合いが全開で、お気に入りだね。そんなに世の中が信用できないのかな? そんな『不夜城』もついに完結編の文庫版が上梓されたよ。さらに人間不信を増すできだ。なにしろ劉健一はすっかり好々爺のように葉巻に凝り、これまで名キャラクターを殺し過ぎたツケか、だれ一人魅力的なサブキャラクターは登場せず、愛憎劇もイマイチだ。すなわちこれはあたらしい文学の形かも知れない。21世紀は、裏切りすら上手に描けなくなっているよ。

(『不夜城完結編 長恨歌』 角川文庫)