A.エルキンス『古い骨』
ブルターニュに邸宅を持つ、老ギョーム・デ・ロシュは遺言を残すべく、一族郎党を集めた。しかし、その家族会議が始まる前に、彼はモン・サン・ミッシェルの浜辺で溺死してしまう。そしてロシュの地下室からは、ナチスに関係あるらしい古い骨が出てくる。たまたまフランスを訪れていた、アメリカの「スケルトン探偵」こと、人類学のギデオン教授がこの謎に挑む……と、まあ、あらすじを書いてしまうとありきたりだが、登場人物のキャラクター、全体にちりばめられたアイロニーがきいていて、かなり面白い小説である。食べ物がいちいちうまそうに書きこまれていて、殺人事件が起こっているわりには呑気な気もするが、まあ、エンターテイメントだし赦されるのだろう。
しかし、ミステリの書評は難しいなあ……
(『古い骨』 青木久恵訳 ハヤカワ文庫)