21世紀文学研究所

1サラリーマンの読書日記です。

内田樹『街場の現代思想』

 もう10日くらい前なのですが、内田樹の『街場の現代思想』を読みました。だから内容はもうほとんど忘れているのですが、模擬人生相談形式で、仕事について、結婚について、大学について、なやましいことの数々を非常に常識的にこたえる本であったと思います。たとえば、「転職した方がよいでしょうか? それとも会社に残って社内変革を目指すべきでしょうか?」という悩みに対して、「あなたに転職する能力があればもうしているし、社内変革をする人望があれば、すくなくとももう社内変革チームに入っている」など。
 おもしろかったのは企業の寿命についての部分ですかね。優秀な創業者とその仲間たちがいて、その後の成長期に猫の手も借りたいので「猫の手より少しマシ」くらいな社員がぞくぞく入ってきて、いざ成長を遂げると「大きな権力、多くの情報、高い賃金」に価値があると信じて疑わない「イエスマン」がどんどん入社してくる。そして上二層がなくなったときにすべからく会社はすっかり衰退の道をたどるのだそうです。まあ、すっかり僕などは「イエスマン」の世代に属しているわけですが。

(『街場の現代思想』 文春文庫)