食文化・料理
数あるスフィーハの中でも絶品なのは、レバノンのベカー高原のバァルベックで作られる「スフィーハ・バァルベキーエ」である。パン生地は直径五センチほどの丸い形にまず分けられるが、真ん中に塩と香辛料の下味が付けられたヒツジの挽き肉とトマトとタマネ…
休日の朝、ベッドからでるまえに30分ほどこのシリーズを読むのが習慣になっている。起きぬけに食べるのではなく、食べることについて考えるのは、一日をはじめる上で重要なモチベーションを与えてくれる。 さて、人間は自分の身体というものを与えられている…
性の蘊蓄にはすぐ鼻をつまんでしまうのだが、わりと食についてはとやかく言われても平気である。これは、『ミスター味っ子』を読んで育ったせいかも知れないし、あるいは、食はバタイユが語っていないからかも知れない。 さて、本気で食欲をそそる池波正太郎…
ふだん、二段ベッドの位置にあるところで寝ている(下の段は本棚)ので、足を怪我している間は床にフトンを敷いて寝ていた。そんなわけで、いつも寝る前に読んでいたこの本、およそ二箇月ぶりの登場となる。 「虫宴は成立するのか」と題された第三章の一部は…
坦々麺はもともと天秤棒に「担」いで売りにきたのがはじまりで、労働者のスタミナ食だったらしい。東南アジアの屋台食はじめ、露店のファーストフードにはスタミナ食が多い。しかし、江戸の露店食ソバは明らかにスタミナ補給に向いていない。杉浦日向子氏は…
ひたすらうまいソバ屋を紹介し、午後2時から昼下がりを憩うべきことを喧伝する書物。文体がすべて同じなので、途中まで全部杉浦日向子が書いているのだ、と思っていたが、よくよく見れば共著であった。それよりもなによりも、「ソバ屋」という中途半端な表…
食文化を語る上で、「中国」とはあまりにもハードルの高い対象である。本書は国立民族学博物館名誉教授の碩学によるものだが、さすがにその力をもってしても、語られる範囲は限定されてしまう。よく知られた、中国語で「鴨」とは何か?という話に始まり、学…
むかし景山民夫のエッセイの中に、中華料理を食べに行くなら大人数を集めなければならない、というのがあったが、本書の第三章では、五〜七人でタイ料理を食べるヴァーチャルの旅ができる。中部タイ(バンコク)、北タイ、東北タイ、南タイの四か所の料理を…
最近、食文化一般に興味があるのはさておき、ともかく、トムヤンクンとグリーンカレーが好きだ。だから、この本を読んだのだが、校正・考証ともに緻密に考え抜かれた、非常にエキサイティングかつ、刺激的な本である。 まるで吉田修一の小説を読んでいるかの…