21世紀文学研究所

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周達生『世界の食文化2 中国』 第一章

食文化を語る上で、「中国」とはあまりにもハードルの高い対象である。本書は国立民族学博物館名誉教授の碩学によるものだが、さすがにその力をもってしても、語られる範囲は限定されてしまう。よく知られた、中国語で「鴨」とは何か?という話に始まり、学者らしい術語への拘りが前に出ていて、同じシリーズの「タイ」と比べればドキドキ感に欠ける。
 しかし、それでも中国の「食」は魅力ある対象であり、食文化を語る上で、「文化」の定義づけからはじめた本書も充分に魅力のあるものである。日本人が平気で食べる生卵と、生理的に受け付けない「ビトロン」(孵化する直前の卵)を例に出し、「文化とは、民族、社会、地域によって異なる価値の体系である」(37ページ)としっかりした概念の設定を持ってからはじまる。
 華北の人が、貧しい文化の中で育てた厚い皮のギョーザと、華南の薄い皮のギョーザ。そして飲茶のなかのエッグタルト進化論、中華料理の話題は尽きない。

(『世界の食文化2 中国』 農文教)