21世紀文学研究所

1サラリーマンの読書日記です。

経済・社会

マイケル・サンデル『これからの正義の話をしよう』 第9章

たいへん面白く読了したのだが、非常にわかりやす過ぎて、これでハーバード大の「政治哲学」の単位がもらえるというのは一種の「ゆとり」ではないかと思ってしまう。やはり、未来のアメリカの指導者達には、「来週までに『実践理性批判』読み通して来いやぁ…

マイケル・サンデル『これからの正義の話をしよう』 第5章

カントは、政治家を信頼する人がいなくなるよりは、政治家の否定の言葉が一言一言吟味されるような状況のほうがましだと言っているわけではない。それは結果主義的な議論だ。カントが言いたいのは、誤解は招いても嘘ではない言葉は、真っ赤な嘘のように聞き…

開沼博『「フクシマ」論』

もう一つ生まれてくるべき疑問は「3・11の間際まで、そこはいかなる姿を見せていたのか」という問いだろう。3・11以前の福島原発は歴史のなかで無視され、なかったことにされてきた存在だった。それはとりわけ、原発と社会の葛藤が明確になった九〇年…

N.F.ケーン『ザ・ブランド』 第五章「エスティー・ローダー」

「美容院、あるいは人の幸せに貢献するものは、何であれ、確実に人類の役に立っているのです。新しい、『ヘアスタイル』で幸せな気分になっている女性が、大きな危機に際して立派に貢献するかもしれないではありませんか」。(245ページ) 「美は世界を救う…

N.F.ケーン『ザ・ブランド』 第二章「ジョサイア・ウェッジウッド」

ジョサイアは、多くのイギリス人が前の世代より豊かになり、非必需品や贅沢品に金をかけるようになったことに気づいた。そして、この消費のほとんどが、社会的な模倣によるものだということを知っていた。現代の消費者と同じく、一八世紀のイギリス人も自分…

畦地裕、岡田邦生、芳地孝之、中居孝文『ロシアビジネス成功の法則』 第三章

ロシアビジネスに関するマニュアル本というよりは、経済、歴史、社会まで、ビジネスマン向けのロシア概説本と考えた方がよいだろう。わずか230ページほどの本だが、記述はわかりやすく、短い時間で正確な知識を得るのに適している。 第三章はとくに読みがい…

栢俊彦 『株式会社ロシア』第三章、第四章

第三章以降は、インタヴュー集である。まず、「どっこい俺たちは生きている ―中小企業の心意気」と題された第三章は、本書が一貫して注目している、ロシアの製造業経営者へのインタヴュー集。第二章までで、国内産業の育成、中小企業保護の重要性と、それに…

栢俊彦 『株式会社ロシア』第一章、第二章

筆者の皮膚感覚では、ロシアが欧州文明社会の入り口に立つのは、市場化プロセスが順調に進んだとしても三〇年後くらいだろう。(「はじめに」) 本書は、駐在経験の長いジャーナリストによる、良質のロシア現代史の解説書であり、計画経済から市場経済へと、…