21世紀文学研究所

1サラリーマンの読書日記です。

栢俊彦 『株式会社ロシア』第三章、第四章

 第三章以降は、インタヴュー集である。まず、「どっこい俺たちは生きている ―中小企業の心意気」と題された第三章は、本書が一貫して注目している、ロシアの製造業経営者へのインタヴュー集。第二章までで、国内産業の育成、中小企業保護の重要性と、それに対する政府の軽視度合いが語られているので、タイトルがナイスタイミングでもあり、ソ連時代の工場主や、混乱期のトレーダーから転身して、製造業のオーナーになった人びとのプロジェクトXが、これまたおもしろい。旧ソ連生物兵器研究所を買収して、製薬会社を設立するなど、ロシアにしかありえないプロジェクトXである。
 第四章では、ロシアの強い女性のプロジェクトXが語られる。ロシアという国は、女性が責任ある職位についていることが多く、ソ連崩壊(=イデオロギーの崩壊)で自身をなくし、アル中かニートになった男に代わって、生計を立てるためにやむを得ず働きだした女性が、男よりも実は優秀だった、というのが主なストーリー。
 ちなみに、アンチウィルス会社カスペルスキーの社長、ナタリア・カスペルスカヤがロシアのビジネスウーマンベスト10に入っていた。