21世紀文学研究所

1サラリーマンの読書日記です。

村上龍×経済人『カンブリア宮殿1』(2)

 今日、なぜかふと思いついたのだが、出版不況はポストモダン批評のせいではないか。物語を純粋に楽しむ気持ちも、作家の生涯に対する下世話な興味も封じられ、書き手としてもがんじがらめにされた結果、コンテンツの魅力が失われてしまったのだ。これを、かならずしもキンドルのせいにするわけにはいくまい。同じコンテンツにしても、ダイエットヨガの方法や、省スペースのコツ、などというものは、電子テキストで読み捨てにした方がいいわけだから。
 ……と、まあそんなことはどうでもいい。
 さて、この本にはmixiはてなの創業者が登場する。二人とも私よりわずか3つばかり年上だが、すでに世の中の多くの人々が参加するコミュニティを作り上げたのだから大したものだ。……これに関しても、はてなダイアリーmixiと書きたかっただけなのだが、下記の一言に関してはほんとうに新鮮だった。

そもそも会社とは資本を入れて拡大して、またそこから利益を出して戻していくというような形だと思うのですが、僕自身は、会社とはお金を使って事業を回すというよりは、アイディアとか行動力のような、人間に備わった資産を使って日々何かをつくっているものだというイメージがあるんです。近藤淳也

 会社というものに入ってまだ5年も経っていないのに、すでにお金を回すことにあくせくしている身としては、かなり耳が痛い発言である。いま、ファストリの柳井社長の『一勝九敗』も読み始めたのだが、ここでも「経営環境は常に変動する。当然のことながら、金儲けやビジネスチャンスが無くなることがある。そうすれば、会社はそこで消滅するか、別の形態や方策を求めて変身していかざるを得ない。会社とは一種のプロジェクト、期限のあるもの、と考えるべきではないだろうか」(18-19ページ)と書かれていて、自分がいかに安穏としていることか、と思わされた。あるいは違うのかもしれないが。