21世紀文学研究所

1サラリーマンの読書日記です。

『桂米朝コレクション2 奇想天外』 「地獄八景亡者戯」

「幽霊のラインダンスに骸骨のストリップやて。……何を見せまんのやろなァ」

「じごくばっけいもうじゃのたわむれ」と読む。おどろおどろしい題名だが、閻魔の法廷にたどり着くまでの道中を書いた滑稽譚である。おなじ文庫のシリーズの、このあいだの志ん朝が「女と男」で、この米朝が「奇想天外」の噺を集めたものだから、簡単に比べるのは不公平だが、やはり上方落語のほうがものごとをコミカルに描く気がする。医者の山井養仙、山伏の螺尾福海、軽業師の野良一、歯抜師の松井泉水が集団で呑人鬼に呑まれ、腹の中で大活躍する場面など、「キン肉マン」を連想させる。
 そんな比較論はさておき、この噺は本当に奇想天外でおもしろい。閻魔大王とか地獄の渡し船とか鬼とかそういうものを卑近なところに落とし込み、さりとてそんなに威厳は失わせない。このへん、関西人の能力のような気がする。

「鬼が笑うとるぞ、こりゃこりゃ青鬼、何がそのようにおかしい」
「うわっはっはっは、笑わんといられん、こいつ来年の話ばっかりしよりますのや」

(『桂米朝コレクション2』 ちくま文庫