21世紀文学研究所

1サラリーマンの読書日記です。

G.ガルシア=マルケス『百年の孤独』 (二)

彼女は、執拗な想起によって思い出のひとつひとつが形をなし、閉め切られた部屋を人影のようにさまよう屋敷のなかに、心のやすらぎを見いだしていた。(191ページ)

 まとめて評文を書けるくらいなら、こんな小説は読むまでもない。ともかく5ページくらいの混沌としたエピソードが、嫌がらせとしか思えないくらいの複雑さで絡み合う。ホセ・アルカディオ、アウレリャノといった登場人物たちは、場面ごとにそのキャラクターを変え、その本質(そもそも彼らに「本質」などというものがあるのかどうかわからないが)が掴みづらい。ひきこもりの金細工師だったはずが、革命軍の大佐になったり、その後やっぱりひきこもりの大佐になったりする。
 その中で、肝っ玉かあさんウルスラだけは自分のキャラを失わない。毎回息子や孫の下に突進しては、叱り飛ばす。