3月2日付 新聞書評メモ
【毎日新聞】
☆若島正評
フリオ・コルタサル『愛しのグレンダ』(野谷文昭訳 岩波書店)
淡々としたボルヘスに対し、情熱的なコルタサル、とする書評がとても面白く、この幻想短篇集を読みたくさせる。しかし、最近の書評欄には、南米文学の書評が充実している、というべきか、それとも南米文学以外にあたらしく発掘すべきおもしろい本がないのか。
☆自著評
あさのあつこ『ぬばたま』
「黒」の枕詞である「ぬばたま」は、意味が分からないので好きな言葉だ。あさのあつこ氏の小説は一切未読だが、すこし興味を持った。
【日本経済新聞】
☆石原千秋評
石川巧『「国語入試」の近現代史』(講談社)
個人的には、「国語」の試験問題というものは、自分で知識を得る能力がどれだけあるか、を測るものだと思っている。制限時間の中で、一定の情報量を、あまり突飛でない形で抜き出すことができるか。あるイミそれは、出題者からの「空気読めよ」、というメッセージである。
「空気読めよ」の正否はさておき、それをあるイミの「思想統制」であるとするのであれば、本書はあまりにも大仰過ぎる気がするが、まあ読む前にうだうだ言うのも、空気読めてないので止めておく。
☆書評委員評
木村汎『プーチンのエネルギー戦略』(北星堂書店)
エネルギー戦略こそは、プーチン体制を読み解く上での肝要だろう。プーチンはエネルギー戦略に関する論文で、準博士号(ロシア語で言う「アスピラント」のことか?)を取得したが、その論文には盗作の疑いが強くあるという。必読の書だろう。
☆森岡正博評
ヴィトゲンシュタイン『論理哲学論考』(岩波文庫)