21世紀文学研究所

1サラリーマンの読書日記です。

2010-11-01から1日間の記事一覧

古井由吉『槿』 4

都内の地図を杉尾は浮かべた。新しい関係の始まりそうな時の習い性である。若い頃からそうだった。女のこともあり、仕事の関係のこともあった。 生まれ育って今も暮らすこの都会の地理について、杉尾は日付の二十年も遅れた概念図をまだ頭の中に、投げやりに…

鴻巣友季子『やみくも』 「彫刻」

「いま、つかみにいきます」 「もうすぐつかめそうです」 「つかみつつあります」 「つかめました」 (119ページ) さて、母であり翻訳者であることを描いた『孕むことば』にいたく感動したので、『翻訳のココロ』もあわせて鴻巣友季子さんのエッセイ集をま…