21世紀文学研究所

1サラリーマンの読書日記です。

2013年の読書記録

ブログを再開したはいいものの、一回それをがんばりだすと、かえって仕事が忙しくなったりするもので、また停滞。せめて本年のベスト10くらいは書いてみようと、「読書メーター」を調べてみれば、今年これまでに読んだ本が40冊しかないことに気づき、愕然とした。ベスト10を出したら、全体の25%カバーしてしまう。
そんなわけで、10冊になるかならないかは置いといて、印象に残った本をいくつか挙げていこう。

フランク・ブレイディー『完全なるチェス』(佐藤耕二訳、文藝春秋)
上野裕和『将棋・序盤完全ガイド』(振り飛車編/居飛車編、マイナビ)
高橋克彦炎立つ』(全5巻、講談社文庫)
夏目漱石『門』(新潮文庫)
伊藤計劃✖️円城塔屍者の帝国』(河出書房新社)

今年、一番ハマった作品としては、やはりなにをおいても羽海野チカ『三月のライオン』で、作劇、作画の技術に賛嘆するあまり、というか、主人公のれいちゃんに憧れて将棋まで始めてしまった。で、将棋の勉強には時間がかかるから読書量が減った、というのが実情。将棋本ももはや古典と言ってよい『聖の青春』はじめいろいろ読んだが、評伝の中では純粋な感動作である『青春』より、ソ連グランドマスターを倒してアメリカの英雄となったが、カネの問題や反ユダヤ発言を繰り返して、CIAにまで追われたボビー・フィッシャーの生涯を描いた『完全なるチェス』の方が印象に残る。
技術を書いたものでは、広瀬章人四間飛車穴熊の急所』、『羽生の法則』あたりが愛読書なものの、手を覚えなくてはいけない定跡書は最後まで読み終わっていないので、各戦法の歴史と企みを一覧できる『序盤完全ガイド』がおすすめ。これを読むとNHKの対局番組を楽しみに見ることができる。
小説では東北旅行を機に読みはじめた『炎立つ』。渡辺謙主演の大河ドラマを子供のころ見ていた記憶が蘇るが、主人公より忘れがたいのは、佐藤慶源頼義。かなりイヤな敵役として記憶に残っていたが、貴族社会の理解を受けられないまま、遠くはなれた陸奥の地で、なりふり構わぬ戦いを続ける様がむしろ応援したくなった。
漱石も今年面白い、と思って再読したもののひとつ。前期三部作の中では、圧倒的な完成度を誇る、と思われる『門』だが、よく考えると安井がモンゴルに流れていて、たまたま大家の兄弟と知り合いだったって、その御都合主義どうなの? と思わなくもないが、そこがまた魅力とも言える。
屍者の帝国』は、円城塔の芸風と合うのかな、と思っていたが、やはり予想以上に面白かったので、名前を挙げておく。出てくる人物が有名人すぎる気もしたのではあるが。