21世紀文学研究所

1サラリーマンの読書日記です。

今月読んだ捨ておけぬ三冊(7月編)

 今月は、それなりに量は読んだんですけど、どちらかというと軽めのものに偏ってますよね。やっぱり日本から本が届いたことが大きいのか。

テッド・チャンあなたの人生の物語浅倉久志他訳)

 単独では「顔の美醜について」を取りあげたわけだが、どれをとっても発想が独特な短篇集。表題作の「あなたの人生の物語」は、未来が見えるようになる図形の文法についての短篇なのだけれど、飛浩隆「象られた力」も同様のテーマだった。個人的に好きなのは、天使が実在する世界を描いた「地獄とは神の不在なり」か。天使の発現により、唯一愛していた妻を失った不具者の、神への不信、というよりは「不運」について書いた話なのだが、こういうミもフタもない感情を書けてしまうところが大作家なのか、と思う。

クリス・アンダーソン『フリー <無料>からお金を生みだす新戦略』(高橋則明訳)

 これの項を書いたときには酔っ払っていたので、いま記事を読み返すと、自分でも意味がよく分からない。ところで、ビジネス本には二種類あると思っていて、まあ、ものごとを簡単に解説して、それを繰り返すものと、ひとつの「思想」のようなものを、これまた何度も繰り返すものだが、明らかにこの本は後者に属する。日本語版の「解説」にも書いてあるけど、音源をフリーで提供したミュージシャンはCDを売る以上の利益を出した、という例はかならずしもそうとは限らない気がするけれど、それでも、海賊盤を容認してでも認知度を上げたほうがよい、という考え方には、読み終えたとき既に染められていた。この辺、何でかな? 著作権を無闇に主張する作家にあまり好感が持てないからかな?

筒井康隆日本以外全部沈没

 中身というよりも、この作品はやはりタイトル。日本「以外全部」って。このタイトルは、繰り返し口ずさんで(?)しまう。しかし、解説を読むとタイトルを考えたのは星新一らしい。