21世紀文学研究所

1サラリーマンの読書日記です。

A.ベスター『虎よ、虎よ!』

 「復讐の動機が逆恨みじゃねーか!」というのを、「読書メーター」のコメントで見て激しく同意してしまった。これだけアイデア大盛り、展開もすさまじいスピード感なのに、主人公にいまひとつ感情移入できないところが若干のマイナスポイントか。あと、送信しかできないテレパスが、読まれたくないのに心の中を読まれてしまうサトラレ状態のときと、主人公にだけメッセージを伝えられるときと、都合よすぎない?とも思う。
 一方で、プテスタインがなぜ一介の宇宙船乗りにすぎないガリーを、話の最初から危険視するのか、といった伏線はかなり後半に回収されており、圧巻のクライマックスまで話が進めば進むほどテンションが上がっていくところはとてもよい。でも、それでも感情移入できないのは訳が古いのかなあ。罵倒語で、「牝犬」と漢字2文字で言われるとなんとなくテンションが下がる。

(『虎よ、虎よ!』 中田耕治訳 ハヤカワ文庫SF)