21世紀文学研究所

1サラリーマンの読書日記です。

今月読んだ捨ておけぬ三冊(1〜5月編)

 この企画と、「ロック・アルバムを読む」は、プロバイダを解約したらなくなってしまった(当たり前だ)ワタクシのHPの企画なのですが、ずっと復活を図っていたものの、月末はそれなりに忙しかったりして果たせずにおりました。今日は一日ヒマなので、復活させてみようかと思います。しかも5箇月分まとめて。俯瞰してみると、そんなに本読んでないのが分かります。

1月
一色伸幸『うつから帰って参りました』、村上龍×経済人『カンブリア宮殿(1)』、ボリス・ヴィアン『うたかたの日々』

 テーマ(、というか精神状態)はおそらく「鬱」だったらしく、飛行機の中で読んだ『うつから帰って参りました』がおおきな衝撃を与えた一箇月。また、ボリス・ヴィアンのような、これまた精神衛生上わるい小説も読んでいる。一方で、発言者としての「社長」に興味をもったのもこのころのようだ。

2月
古井由吉『山躁賦』、大塚和夫編『世界の食文化10 アラブ』、柳井正『一勝九敗』

 仕事的には比較的落ち着いた一箇月だったようで、そこそこの冊数を読んでいる。なかでも古井由吉をよむ、というのはほとんど外国語の作品を読むのに匹敵する作業なので、精神的に元気だったのかも知れない。元気、といえば『世界の食文化 アラブ』はこれほど元気になる本もないので、ぜひ皆さん読んでほしい。テーマの豊かさはもとより、食べることをここまでうまそうに書けるのか、と感心する。そして、「社長」というキャラクターのなかでも、柳井さんは極端にキャラが立っている。

3月
平野克己『南アフリカの衝撃』、鹿島茂『パリ五段活用』、奥田英郎『サウスバウンド』

 3月、4月はあまりにも忙しくて、ブログを更新するヒマはなかったが、『南アフリカの衝撃』はきちんと取り上げなければいけなかった一冊だ。歴史、社会、そして世界経済における位置について、過不足なく書いてある上に、読んでいて面白い。あとの本はほとんど飛行機での移動中に読んだが、ここに挙げた二冊は何かと元気になる本だ。

4月
桂米朝コレクション4 商売繁盛』、村上春樹ザ・スコット・フィッツジェラルド・ブック』、宮部みゆき『楽園』

 ビジネスにおける倫理観、とかそういうややこしいことは抜きにしても、「社長」というものの在り方に興味を持った身としては、大阪商人の落語がみょうに響いた。一方でフィッツジェラルドはそういうものの対極にある。宮部みゆきの登場人物は、すぐに名前を忘れてしまうのだけれど(と、いうことは彼らはおそらく作者とまったく同じ感覚を持って生きているのだけれど)、なぜか魅力的だ。

5月
エミリー・ブロンテ嵐が丘』、ミラン・クンデラ『無知』、堀江敏幸『回送電車』

 いちばん面白い文学は英文学だ、というわけの分からない認識を『嵐が丘』のせいで持ってしまった。クンデラの『無知』は、タイトルに関してはダダスベリだが、現代の世界を考える上でヒントを与えてくれる。つまりは、昨日書いたようなことだが、どうして亡命者は英語やフランス語を選ぶのかについて。『回送電車』は堀江敏幸のほかの文章よりも、ヴィジュアルを重視して書かれているように思う。