21世紀文学研究所

1サラリーマンの読書日記です。

村上龍×経済人『カンブリア宮殿1』 (3)

 家賃の支払いのために銀行を訪れていて、待ち時間に『週刊ダイヤモンド』のツイッター特集を読んでいたのだが、こういうのを読むと何となく自分の人間観がゆらぐのを感じる。
 また、これも何かのビジネス雑誌で読んだのだが、ジャック・アタリという人は、人と話しながらもBlackberryでメールを書いているらしい。(アタリさんがだれだか、実はよく知らないが)。つまりは今、「できる人」はつねにオンラインなのだ。
 たとえば主に20世紀のうちに形成された私の人間観によれば、「できる人」は(できれば数ヶ国語の外国語も含んで)多くの本を読みこなし、その情報をもとにゆらぎのない世界観を確立している人、というようなイメージだ。だが、たぶん、こういうのはもう古い。もちろん本も読んでいたほうがいいのだろうが、読む力は速読であればあるほどよく、その後はオンラインで「ダダ漏れ」してくる情報をうまくスクリーニングできる人のほうが、「できる人」ということになるようだ。
 さて、話は変わるが、私は「仕事ができる」という表現があまり好きではない。新入社員のころの研修で、タイムマネジメントの本を読まされ、「できる人は上手に仕事を振ることができる」と書いてあるのを読んでからである。では、会社中が「できる人」になってしまった場合、一体誰が仕事を「する」のか? なんだか空恐ろしくなり、研修から帰って上司が、「新入社員にタイムマネジメント教えたか。本当にあいつらはバカだなあ。お前らなんて何時間かかろうがちゃんと仕事覚えなさいよ」、と言われてすこし安心したくらいである。
 さて、今日はここまで本の話まったくしていないが、『カンブリア宮殿』でSBIホールディングス北尾吉孝氏が登場し、ソフトバンク証券に移ることを決めたとき、「資料室に10日間こもってソフトバンクに関する資料を読み漁った」というのを読んで、これまたすこし安心した。やっぱり、人間、どんなに「できる人」でも、重要な決定をする際には10日くらいはかかるのではないだろうか。

たとえば銀行業務を始めるという時に、銀行業務について勉強しないで始めるということができないんですね。いろいろなものを読むし、過去の歴史がどうだったかを勉強する。(中略)最近のネットの経営者はいとも簡単に「ネット金融だ」ということでパッと買収されて入ってこられるけど、どれくらいその人たちが金融の世界を勉強されているか、疑問です北尾吉孝