7月27日付 新聞書評メモ
【日本経済新聞】
☆高山宏評
ミシェル・ド・セルトー『ルーダンの憑依』(矢橋透訳 みすず書房)
かなり古い本。そして「アナール学派」という名前は昔から聞きながら、その実何なのかよく分からない学派の本らしい。だがもともと同一のものだった「ファクト」と「フィクション」が分離し、憑依を意味する「ポゼッション」が「所有」に近代化していく時期の憑依事件を描いた、物語的な歴史の本、と紹介されればとても心惹かれる。
☆山城むつみ評
平野啓一郎『決壊』(新潮社)
「現代」を描いているはずの、現代日本小説には興味を惹かれるのだが、どうも書評の冗長さを見る限り、作品も城朝のような気はしてしまう。
【毎日新聞】
☆書評委員評
神代真砂実『ミステリの深層―名探偵の思考・神学の思考』(教文館)
ミステリの機能は混沌から秩序を生むことであり、それはキリスト教世界観に通じる、というようわからん話が心をひく。