21世紀文学研究所

1サラリーマンの読書日記です。

3月30日付 新聞書評メモ

日本経済新聞

編集委員 浦田憲治評
『文学界』四月号
 新旧の作家を集めた、「ニッポンの小説はどこへ行くのか」という座談会を収めているという。タイトルからも、記事を読んでも、ありきたりな内容しか想像されないが、そこは書評の妙で、これを同じ『文学界』で行われた「近代の超克」座談会に対置した。そこまでされては、読まないわけにはいかない気もする。

☆黒谷比佐子評
高島俊男『天下之記者』(文春新書)
 同じ本の書評が、先週の毎日新聞にも載っていたが、このときは心を惹かれなかった。今回、興味を持ったのは、主人公である山田一郎という記者が、明治三十年『読売新聞』に連載した「強羅温泉之記」のエピソードが取り上げられているからだ。在原業平西行が強羅に滞在して詠んだ、とする歌をちりばめてこの記事は書かれているのだが、強羅温泉はその前年に開かれたばかりであるという。もちろん当時の読者はわかっていて、笑いながら読んだのだろうな、と想像するとこちらも小さな笑いがこみあげてくる。やはり、書評はちょっとした気配り、あるいはあざとさが読者獲得につながるのか。

編集委員
岡田邦夫ほか著『ロシアビジネス成功の法則』(税務経理協会
 これは一応読まないわけにはいくまい。と、いうわけで早速買ってきた。

毎日新聞
沼野充義
T.カポーティティファニーで朝食を』(村上春樹訳 新潮社)
 やっと新聞に書評が出た、という感じだが。沼野先生もこれまでの村上翻訳作品に対するスタンス(さすが天才だけど、自分の芸風に合わせるだけですこし手を抜いてんじゃないの?)を貫きながらも、ベタぼめである。翻訳がよくできていて、内容もおもしろい。そして読者がみんなその作品の存在を知っている、そういうものの書評がきっと一番難しい。