21世紀文学研究所

1サラリーマンの読書日記です。

3月9日付 新聞書評メモ

毎日新聞
小島ゆかり
『雨の言葉 ローゼ・アウスレンダー詩集』(加藤丈雄訳 思潮社
 前世紀の過酷な時代を生きた、ユダヤ系ドイツ詩人による詩集。まったく未知の人だが、書評に引用された詩が美しいので心惹かれる。

富山太佳夫
カルロ・コルドーニ『コルドーニ喜劇集』(斎藤泰弘訳 名古屋大学出版会)
 このテの学術的な古典翻訳は、読み始めて面白くなるまでかなりの努力を要するが、いざ面白くなると何ものにも代えがたい。時間があれば、気合いを入れて読み始めたい一冊である。

田中優子
深沢克己『商人と更紗 ―近世フランス=レヴァント貿易史研究』(東京大学出版会
 今週は毎日新聞の書評「らしさ」が出ていて、書評欄が面白い号だったと言えるだろう。これも、読み始めれば面白いにちがいないが、読むには気合いのいる研究書。

日本経済新聞
☆書評委員評
ジャン・ヴィトー『ガストロノミ』(佐原秋生訳 白水社文庫クセジュ
 最近、また食文化にたいする関心が高まっているだけに、医師が料理の楽しみを小難しく書いた本、というのは関心を引く。文庫クセジュは楽しみ方がむずかしいが、ともかく誰も出さないようないい本を出す。

森岡正博
オイゲン・ヘリゲル『日本の弓術』
 書評は、新渡戸稲造『武士道』にも話が及び、「誤解」のおもしろさを語った名文。西洋の意識論に、日本の伝統文化をからめるのはたしかに拡大解釈だが、拡大しているだけにこれほどおもしろさが明確になるものもない。