21世紀文学研究所

1サラリーマンの読書日記です。

奥田英郎『空中ブランコ』

 『キン肉マン』という作品にこめられたメッセージが、「友達を大切にしよう」であるように、奥田英郎『空中ブランコ』にこめられたメッセージは、「がんばらなくていいよ」である。空中ブランコのフライヤー、ヤクザ、医者、プロ野球選手、女流作家といった、いわゆる「プロ」な人々が、自分より病んでいる精神科医、伊良部と出逢い、病気に拍車がかかることで、なぜか救われていく。そんな水戸黄門のごときストーリーが五つもくり返されて、なぜか退屈せずに癒されてしまうのは、やはり今週が忙しいからなのか。

(『空中ブランコ』 文春文庫)