21世紀文学研究所

1サラリーマンの読書日記です。

2月24日付 新聞書評メモ

毎日新聞
「この人・この3冊」は好きなコラムだが、専門違いの「この人」に当たると、まったく何のことを書いているのか分からなくなることと、取り上げられる本の5割以上が、「品切れ」なのが些かの難点と言える。新刊・売れ行き良好書のみの書評へのレジスタンスと思えば、それはそれで魅力的だが。
☆菅野昭正評
川村二郎『チャンドスの城』(講談社/品切れ)
 そんな「この人・この3冊」の中で、品切れでも読みたいと思った一冊。クンデラ『不滅』の訳者である菅野昭正による、川村二郎のホフマンスタール論の紹介、という取り合わせの妙もよい。本屋という場所は、どうしてもホフマンスタールから遠く、浅学にもその作品に触れたことはないのだが、どうしても興味のある作家だ。古本屋に行けば、すこし距離が近くなるだろうか。

堀江敏幸
小島信夫『小説の楽しみ』(水声社
 「小島信夫にとって、小説はどんどん増殖し、自在に形を変えていく巨大な生き物であり、全体像を容易に把握できるものではなかった。しかしその把握できない全体こそが小説のすべてであり、それなくして細部の輝きはありえないと考えてもいた。」堀江敏幸の書評はほんとうに上手い。ちょっと前の日記で、物語はつくり物である、とか何とか書いただけに、これまた読みたくなる。

池内紀
阿部良男ヒトラーとは何者だったのか?』(学研M文庫)
 ヒトラーに関する厳選220冊から、この前世紀の怪物を読み解くとする書。厳選で220冊もあるのか、と思いながらも、これが研究者ではなく、銀行勤めをしながら資料を渉猟した結果として生まれた本であると聞けば、さらに興味が湧く。

日本経済新聞
先週メモした、バルガス・リョサ『楽園への道』が取り上げられていたり、鴻巣友季子さんの「半歩遅れの読書術」も、私の大好きな古井由吉作品であるため、メモする本は必然的に少ない。

生井英考
ナタリー・Z・デーヴィス『歴史叙述としての映画』(中條献訳、岩波書店