21世紀文学研究所

1サラリーマンの読書日記です。

2月10日付 新聞書評メモ

 日曜日には、二紙以上の新聞書評を読むのを日課としている。基本は、日経と毎日である。日経は社会人になって、しょうがなく読み始めたのだけれど、3年経ってみると、いちばんバランスの取れた書評が掲載されているように感じる。毎日は学生のときから読んでいて、ここ2年ほどかなりレベルが落ちたような気がする(とくに、研究書までも自在に読み解いていた書評記者の書評が、最近はただの新聞記者の読書感想文に堕している)が、沼野充義鹿島茂若島正といったスタープレーヤーを擁した文学書評が面白くないわけがない。
 日曜日にいっしょうけんめい書評を読んでいても、その後の平日の生活の中で、自分が何を読みたかったのか忘れてしまう、それではあまりに勿体ないので、すこしメモを取っておこうと思う。

日本経済新聞
鴻巣友季子評 
スキ・キム『通訳/インタープリター』(國重純二訳 集英社

 「半歩遅れの読書術」は、各新聞書評コラムの中でも群を抜いておもしろい。先週(たぶん)くらいから、『エリザベス・コステロ』の翻訳者でもある鴻巣友季子さんがこのコラムを担当していて、これがまた秀逸な出来である。上記のミステリ小説も、将来的に読むかどうかは別として、「翻訳者としては、身震いするほど恐ろしい小説だったのだ!」とか言われると、「読んでみようかな」という気にさせられる。

☆坂田正三評
関満博・池部亮編『増補版 ベトナム市場経済化と日本企業』(新評論

 かつてロシア語を学習したものとしては、ベトナムという国にも若干興味がある。とくに、硬質な経済書というのは、その国を知る上で、文学にも匹敵するおもしろさがある。

毎日新聞
池澤夏樹
白石かずこ『詩の風景・詩人の肖像』(書肆山田)

 詩人のエッセー、詩のアンソロジーとなれば、どうしても私など食指が動いてしまうのであるが、問題はとくに白石かずこ、という詩人に興味がないところだけか。

養老孟司
堤未果 『ルポ 貧困大国アメリカ』(岩波新書
鹿島茂
山崎正和 『文明としての教育』(新潮新書

 サラリーマンの読書の王道はやはり新書で、私なぞも生活サイクルからすればいちばん読みやすく、上記二書のように心惹く書評を書かれると、思わず買ってしまうのだが、アメリカものと教育ものというのは期待はずれを食わされるのが多い分野であるだけに、要注意。

 ともかくも、本屋に行くことと、書評を読むことは、バーチャル読書行為としておもしろくて仕方ないのは事実である。たいてい、読まずに終わるのだけれど。