21世紀文学研究所

1サラリーマンの読書日記です。

F.カフカ 『審判』 第七章

彼がこれまでずっと期待していたのは、画家か彼かが突然窓際に行き、これをあけはなつことだった。霧でもいいから、大きな口をあけて吸いこみたいものと、待ちかまえていたのだ。ここでは空気からすっかり遮断されているのだという感じがして、それがめまいをひきおこさせた。(第七章)

 カフカ『審判』は被愛妄想の小説かも知れない。ともかくヨーゼフ・Kはいろんな女性に声をかけられるし、異性のみならず、ともかくこの男は自分が注目されていなければ気が済まない。第七章、画家の家に住む娘たちのエピソードなどはまさにそうだろう。猫背の少女に肘でつつかれただけで、彼は堕落した少女が性的に誘っている、ととる。これまでにも、ビュルストナー嬢から、下宿のおかみから、廷丁の妻から、看護婦のレーニから、さんざんに「もてて」きては、彼女らのスカートにばかり視線を向けてきたKだが、第七章にいたっては、かずかずの少女(たぶん萌えキャラ)の視線を感じずには生きていけない。きっとアホなのである。

「しかし、Kは乞食絵かきの職業体験などにはまったく興味がなかった」(第七章)

(前回の記事を書いてすぐに、「カフカ」にもリンクが入っていることに気づきました。スイマセン)