21世紀文学研究所

1サラリーマンの読書日記です。

雑感

 前々回に、「不退転の決意で」とか書いておきながら、暫くのご無沙汰でした。と、いうのも、健康診断で「肺に陰があります」という結果が返ってきたために、「ああ、もう、私は死ぬに違いない」と思って二週間を過ごしていたからなのです。結局、この二週間、レントゲンを撮り直したり、CTまで撮って確認したところ、「異常なし」であることが分かり、ほっと胸を撫で下ろすまで、ひたすら鬱々と暮らしておったのでした。無駄に騒いで、まわりの人にも色々と迷惑をかけました。申し訳ない限りです。そして今は、禁煙による鬱症状とたたかっております。一向に鬱からはなれられないじゃないか。
 そんな二週間のあいだに、ひとつ夢を見ました。私は中年のしょぼくれた刑事か、探偵で、昔はそこそこ活躍していたようなのですが、今は仕事の中身もしょぼくれておりました。そんな私が事件を追う中で、事件の真相を握っているらしい、没落した貴族の令嬢と出会います。この女は、事件の真相が知りたければ、栄華の昔を想い出させるような食事をごちそうしろ、というのでした。しかし、貴族の令嬢もなにも、女は売れないキャバクラ嬢にしか見えないですし、だいたいそんな食事は経費で落ちないですから、しょぼくれた私にこの女の夢、というか希望を叶えてやることはできません。
 しかし、私であるらしい刑事、はふとこのとき思うのでした。昔は私財を投入しようと、裏金を使おうと、事件の真相に迫れるチャンスを逃したりしたろうか? そうやって危ない橋を渡りながら、俺の前半生は輝きを見せていたのではないか? ここでこの女を跪かせるほどの金を使って、借金を背負おうと、あるいは背任で訴追されようと、輝きのない人生に何の価値があるだろう? そう思った私は、女を高級レストランに連れて行き、浴びるほどのシャンパンを発注したあと、止めていたはずの煙草に火をつけるのでした。果たして今どき、禁煙でない高級レストランがあるだろうか、と内心で思いながら・・・
 と、ここで目覚めて、夢の出来ぐあいのチープさに、ちょっと怖気をふるいながら、それでもこの夢には一つの真理があるような気がしました。それは、やっぱりコカイン常習者であるシャーロック・ホームズは早死にする、ということです。そして、ホームズが早死にすることに目をつぶりながら、かれの活躍を楽しく読んでいる自分をたまには反省しないといけない、と思いました。