大森望編『逃げゆく物語の話 ゼロ年代日本SFベスト集成F』
ここのところ『ジェイン・エア』を読んでいるのだが、年末年始にかけて読んでいたのはSFっぽい本が多く、昨日の記事を書いたあとで、そういえばこんな本も買ったな、と思って読みはじめたらおもしろくて、一気読みしてしまった。とりあえず『ジェイン・エア』は忘れて。
12人の作家の作品が載っているけれど、これまでに私が作品を読んだことがあるのは、恩田陸、乙一、小林泰三の3人のみ。それでも大変におもしろかった。SFについては一家言もないどころか、まったく無知なのだけれども、少しはまってきているのかも知れない。私のベストは圧倒的に石黒達昌『冬至草』。つづいて小林泰三『予め決定されている明日』、古橋秀之『ある日、爆弾が落ちてきて』というところか。
ところで、読んでいて思ったのだが、この作品集において、有名作家とあまり有名でない作家(たいへんに恣意的な分け方ではあるが)を分けるものって、言わずもがなの一言を書くか書かないか、ということにあるように感じられる。これは大変に悲しい。たとえば、乙一の『陽だまりの詩』など、「親」という漢字の使用を禁止して書き直せば、すばらしい作品になると思う。
(『逃げゆく物語の話 ゼロ年代日本SFベスト集成