21世紀文学研究所

1サラリーマンの読書日記です。

The Smiths "The Smiths"

England is mine and it owes me a living. Ask me why, and I'll spit in your eye(STILL ILL)

 最近の私の確信は、ポップカルチャーが発達すれば政治・経済的に国は滅びる、ということである。むろん、ポップカルチャーのファンとしてそのことに反対なわけではないのだが、同時にそのことに自覚的であるべきだ、とも思う。つまりスミスを聴くのは、そのために大変よいことであると思っている。
 このアルバムでは2か所に少年を誘惑するゲイの紳士が登場し、だいたい女の子は男に犯罪を犯させ、さらには2か所に子供を対象とした殺人者が登場する。とても後味の悪いアルバムだ。だいたい折り返し地点くらいに登場する、STILL ILLとHAND IN GLOVEのみ、わずかな希望が感じられるが、その希望もすべてにおいて過去の出来事である。

I know my luck too well and I'll probably never see you again.(HAND IN GLOVE)

 スミスについて書かれたものは、雑誌記事でもライナーノーツでもウィキペディアでも、きわめて饒舌なうえにたいていよくできているので、バンドそのものについてはグーグルででも検索してもらうとして、書きたいのはスミスの現代的意義についてだ。(アクチュアリティという言葉はたいへんに嫌いなのだけれども)。大衆音楽としてのロックが、かなり負け組に属してきた現代においても、スミスほど負けているバンドはない。もはやここまで負けると、誇りを持って負けている、否、負けることに誇りを持っているようにさえ思える。
つまりスミスは正しく明日を負ける方法を教えてくれている、と思いたい。

Does the body rule the mind or does the mind rule the body? I dunno...(STILL ILL)