21世紀文学研究所

1サラリーマンの読書日記です。

ダイジェスト版

 さて、仕事がどんどん忙しくなってまいりまして、また日本にも5日くらいですが帰っていたもので、書けずにおります。ほんの僅かですが、ここに書いた以外にも読んでいるので、まとめて紹介させてもらいます。

 異国に暮らす者として、捨て置けないのは黒田龍之介『世界の言語入門』(講談社現代新書)と、永井荷風ふらんす物語』(岩波文庫)。前者は90の言語をテーマにしたエッセイ集で、人間はここまで言葉について知ることができるか、と思うとなんだかドキドキする。この本の影響で、フィンランド国境の町に行ったとき、フィンランド語の教科書を買ってしまった。また、『ふらんす物語』は、外国にここまで憧憬をいだけることに憧れを抱いてしまう、という不思議な感覚を覚える。
 ビジネス関連では、萩原睦幸『よくわかる日本版SOX法』(日本実業出版)と深井晃子編『ファッション・ブランド・ベスト101』(新書館)を読む。前者は入門書として非常によくできていると思う。後者はおそらくずいぶん前に買った本だが、読んでみて、ブランド本を作るとビジネス書やディスク・ガイドよりは、偉人伝に似るのだなあ、という妙な感想を持つ。
 日本で購入した本として、芦崎治『ネトゲ廃人』(LEADERS NOTE)は面白くて一気読みしたのだが、結局この書いた人はネットゲームにはまることなどないのだろうな、と思うと若干なえる。花沢健吾ルサンチマン』の、「現実を直視しろ、俺たちにはもう仮想現実しかないんだ」という痛切な叫びを数年前に聞いているものとしては、もっと一歩進んだルポも読みたい。
 古井由吉『野川』(講談社文庫)の二回目も読み終えたので、私のカタログも2個目ができるはずだが、まだ書く気力が起こらない。しかし、『白暗淵』はこの小説に比べればずいぶん分かりやすく書いたものだ。
 ミステリ本では馳星周『ブルー・ローズ』(中公文庫)を読んだ、上巻でこれでもか、というほど古典的ハードボイルドのパロディをやり、その主人公を馳ノワールの世界に沈める、という構成は面白いが、ここんとこ『楽園の眠り』や『トーキョー・バビロン』で少し前向きな登場人物を出し、それが見事に暗い世界に映えていたのを思えば、なんだかあっけなく沈んだものだ、という感想も持つ。
 いまは、ジュンパ・ラヒリ『停電の夜に』(新潮文庫)、小島信夫『残光』(新潮文庫)、Andrey Kurkov"The President's Last Love"を並行読み。『停電の夜に』は日本に帰った瞬間、うれしくて本屋に飛び込んだものの、小さい本屋だったため買うものがなく、仕方なく手にしたがこれはかなり面白い。世界観的には江國香織のようなものか。小島信夫は大恩ある浦雅春先生の『チェーホフ』が紹介されていてうれしくなった。最後の本は英語で読んでいるが(なお、前田和泉氏による邦訳もある)なかなか進まない。