21世紀文学研究所

1サラリーマンの読書日記です。

(0)カタログの選定にあたって

 このブログもはずかしいタイトルがついている以上、なにかしら「研究所」らしきことをやらねば、という気になった。すくなくとも読者様に、自信を持ってお勧めできる作品を提示するくらいのことがあっていい。ただしあまり無責任になってもよくないので、1)自分がせめて2回以上読む気になって、2)なんであれ初回の出版が2001年以降であって、3)読める言語からの翻訳であれば根性を出して原語で読むくらいの作品、を集めることにした。おそらく遅々として更新は進むまいし、間違いなく完成(2100年の作品を収める)前に自分が死んでいるところが面白いような気がする。(それ以前に「はてなダイアリー」がそんなに続くまい)。
 人間は無責任なので、自分が物心つくまえのことは「歴史」で、それ以降は「現代」だと思ってしまう傾向があるが(たとえば31歳の私にとって、ゴルバチョフレーガンは同時代人だが、フルシチョフとカーターは歴史上の人物である)、たぶん200年後の文学史では、今現在勝手に「現代文学」と呼んでいるものも、「20世紀文学」か「21世紀文学」のどちらかで語られる。アントン・チェーホフは20世紀にも作品を書いているのだが、かれを「19世紀の作家」と呼ぶことはあっても、「現代作家」と呼ぶことはないように、私が好きでよく取り上げているクッツェーとか古井由吉とかもどちらかと言えば間違いなく20世紀の作家なのだが、教条的に刊行年と、「2001年」という基準で分けてみるとかえって面白いのではないか、という気になった。(10)くらいまでは飽きずに続けられるとよいと思う。
 (1)として『わたしを離さないで』を挙げたが、この作品が格別に素晴らしい、と思っているわけではなく、前回読んでから程よい時間が経って、再読にふさわしいと思われたものが他になかったからである。次回はおそらく、古井由吉『野川』とかになるが、どちらもどう転んでも四半世紀以上小説を書いている人たちなので、そのうち本当の21世紀の作家がここに登場すればいいな、と思う。