四方田犬彦『ハイスクール1968』 第五章
どうしてもこの本は1970年前後の文化を紹介する本に見えてしまう。著者本人が「このエッセイの中心」、とする高校のバリケード封鎖に、今ひとつドラマを感じられないからだ。
そうすると、この本は文化史の一冊として、尋常ではない魅力を放つ。一人の高校生が、激動の時代に感じた文化的体験の記録として、本当にその前後数年に発表された作品だけで文化史が書けてしまうのだ。ビートルズやジョン・コルトレーンなど、若干前のものもあるが、1968-1970という年代を限定しただけで、澁澤龍彦、寺山修司、三島由紀夫、田村隆一が生で(?)登場する。
ともかく、この団塊の世代への憧憬なのかなんなのかよく分からん感情を、どうにかせんといかん。