21世紀文学研究所

1サラリーマンの読書日記です。

2010-11-23から1日間の記事一覧

古井由吉『杳子・妻隠』 「杳子」

「あなたは健康な人だから、健康な暮らしの凄さが、ほんとうにはわからないのよ」(八) むかし、やしきたかじんが、あるタレントの浮気を評して、「あれは病気やないねん、癖やねん。癖やから一生なおれへん」と言っていたが、この小説が書いているのは要は…

古井由吉『杳子・妻隠』 「妻隠」

なんだか魂が、というより軀の感じが軀からひろがり出て、庭いっぱいになって、つらくなって、それからすうっと縮まって軀の中にもどってくる。おもての物音をつつんで、すうっと濃くなって入ってくる。そのたびに金槌の音だとか、男たちのだみ声だとかが、…