21世紀文学研究所

1サラリーマンの読書日記です。

2010-02-13から1日間の記事一覧

古井由吉『山躁賦』 「静こころなく」

そういって男は笠の縁に手をかけ、かたわらの、桜とも思えぬけわしい枝張りの枯木を仰ぐと姿がやさしくなり、風を慕って、ゆるやかに身をめぐらし本堂のほうへ向きなおり、杖は置かずに片手で深く礼拝して、ふっとまた起こした目を堂の背後に黒々と重なって…