ロッキンオン編集『rockin'on BEST DICS500 1963-2007』 第一章
ロックは時代を映す鏡である。今もそうかどうかはわからないが、ロックが時代を映す鏡でないところが、時代を反映しているのかも知れない。
伊良部先生のところの看護婦さんも読んでいるという、洋楽誌『ロッキンオン』がはじめて編集したというディスク・ガイドの第一章は、1963年から1969年まで。確実に時代を反映していた頃の、ロックの物語である。
まあ、この時代に関しては、ビートルズとか、ストーンズとか、ツェッペリンとか、ジミヘンとか、ビッグ・ネームを挙げていけば紙面が埋まってしまうので、びっくりするようなめずらしい話はとくにない。(1970年代だと、名前も知らないようなバンドが登場したり、グラム・ロックの黎明期はスティーヴィー・ワンダーやマーヴィン・ゲイが活躍した時代と同時代なのだとかいう、当たり前だけど新しい発見があったりするが)。
おもしろいのは章末にある年表か。ロック史の有名な事件(ウッドストックとか)や、シンセサイザーの発明、カセットテープの販売開始など、音楽に関する歴史が上手に編集されて、かなりくわしく掲載されている一方、ページの一番下に3センチばかり、おまけのように書き加えられた「政治・経済・事件」の欄は、65年から68年までに起こった事件が「マルコムX暗殺」と「米軍、北ヴェトナム空爆開始」だけになっているなど、ギャップがすごいものの、かなり的を射ている。
ともかく、ただのディスク・ガイドではなく、物語のあるつくりになっていてかなり面白い。おすすめである。
(『rockin'on BEST DICS500 1963-2007』 rockin'on)