21世紀文学研究所

1サラリーマンの読書日記です。

ミステリをたくさん読む(12月)

 なんかこの企画、無事一年続いた。発見もあったし、本格ミステリの面白さにも目覚めたので、来年も微妙に続けていこうと思う。ただ、来年はこの五段階評価を「ロシア文学」でもやってみようと思っているので、どうなりますやら。

 ところで、年末にランキングを見直してみて、最初の方に読んだ本の評価が辛いのではないか、と思えてきた。脳内会議の結果、『カーテン』『春にして君を離れ』『涙香迷宮』『私が殺した少女』の四作を5点に、『さむけ』を4.5点にランクアップしようと思う。あと、『赤い収穫』がランクから漏れていた。

 さて、12月は9冊。けっこう読んだな。

 

レイモンド・チャンドラー『長いお別れ』(清水俊二訳、ハヤカワ文庫)★★★★★

アガサ・クリスティー『杉の柩』(恩地三保子訳、ハヤカワ文庫)★★★★★

逢坂剛『百舌の叫ぶ夜』(集英社文庫)★★★★★

島田荘司『斜め屋敷の犯罪』(講談社文庫)★★★★☆

S.S.ヴァン・ダイン『僧正殺人事件』(日暮雅通訳、創元推理文庫)★★★★

都筑道夫『なめくじに聞いてみろ』(講談社文庫)★★★★

若竹七海『不穏な眠り』(文春文庫)★★★☆

ヘニング・マンケル『笑う男』(柳沢由美子訳、創元推理文庫)★★★☆

法月綸太郎『生首に聞いてみろ』(角川文庫)★★★☆

 

 満を辞しての『長いお別れ』。総合1位にする気マンマンで、導入のテリー・レノックスの登場の見事さにもしびれながら読んでいたのだが、案外中盤のアラが目立ったので2位に。チャンドラーの女性描写がショボいのは、萌えキャラとして書いているから、という持論をここでも何回か展開したが、この作品に出てくる三人は萌えキャラとしても成立してないただのステレオタイプでは?と思えてきてしまった。ただ、欠点はマーロウとテリーの絡みですべて打ち消せる力のある小説。

 『杉の柩』はプロットにそんなに感動したわけではないのだけれど、ポアロの「嘘というものは、聴く耳を持つものにとっては、真実同様の価値があるのです」という一言で、登場人物の証言が彩りを持つところが好き。『百舌の叫ぶ夜』もプロット的にはベッタベタなのだが、公安、謀略、復讐というゾクゾクの要素をハイスピードでぶつけられて降参した感じ。

 『斜め屋敷の犯罪』は絵があんまり素敵で、ほとんど笑えるくらいだったのと、最後の動機パートが、完全に付け足しなのに、共感できてしまった。ザ・古典の『僧正殺人事件』は1920年代ニューヨークの雰囲気と、衒学的な語りには酔えるんですが、若干話が退屈かも。

 父親が残した12人の殺し屋を次々に始末していく、というマンガっぽい設定の『なめくじに聞いてみろ』は面白かったのだが、言葉がちょっと大時代すぎるのと、戦闘シーンの描写がイマイチ。

 葉村晶ものの新作として期待して読んだ『不穏な眠り』は正直イマイチだったかも。シシドカフカ主演でドラマ化されるそうですが、私の葉村さんのイメージは「マンハッタンラブストーリー」の小泉今日子だったんだけれど。クルト・ヴァランダーもの第四作『笑う男』は、完全に『新宿鮫Ⅲ』だった。

 「なめくじ」読んだので、『生首に聞いてみろ』も読んだのだが、こちらも多少退屈だった。

 

(星5)『不夜城『長いお別れ』さらば愛しき女よ』『錆びた滑車』『OUT』『マルタの鷹』『高い窓』『満願』『屍人荘の殺人』『静かな炎天』『杉の柩』『百舌の叫ぶ夜』『カーテン』『春にして君を離れ』『涙香迷宮』『私が殺した少女』(星4.5)『リトル・シスター』『五匹の子豚』『ブラック・ダリア』『さらば長き眠り』『さよならの手口』『ブラウン神父の童心』『悪いうさぎ』『斜め屋敷の犯罪』『りら荘事件』『ノックス・マシン』『オーダーメイド殺人クラブ』『さむけ』(星4)『僧正殺人事件』『獄門島』『戦場のコックたち』『ミレニアム1』『依頼人は死んだ』『神様ゲーム』『スタイルズ荘の怪事件』『なめくじに聞いてみろ』新宿鮫Ⅹ 絆回廊』『白い雌ライオン』『赤い収穫』『ビッグ・ノーウェア』『刑事マルティン・ペック 笑う警官』『アリス殺し』『天使のナイフ』『折れた竜骨』『バッド・カンパニー』『マネーロンダリング』『鍵のない夢を見る』『果てしなき渇き』『ボーン・コレクター』『生ける屍の死』『ドS刑事 風が吹けば桶屋が儲かる殺人事件』『檻』『古書店アゼリアの死体』『ビブリア古書店の事件手帖 栞子さんと奇妙な客人たち』(星3.5)『不穏な眠り』『緑衣の女』『ローズガーデン』『Aではない君と』『愚か者死すべし』『11/22/63』『笑う男』『プレイバック』『教場2』『その可能性はすでに考えた』『クビキリサイクル』『LAコンフィデンシャル』『首無しの如き祟るもの』『生首に聞いてみろ』メーラーデーモンの戦慄』(星3)『秋季限定栗きんとん事件』『四日間の奇蹟』『人間の顔は食べづらい』『八月の降霊会』『暗幕のゲルニカ』(星2.5)『ミレニアム2』『真実の10メートル手前』『ヴィラ・マグノリアの殺人』(星1)『一千兆円の身代金』